オペラ解説:フィガロの結婚 "Le nozze di Figaro"  W. A. Mozart 作曲

「フィガロの結婚」の初演時ポスター

File:TheMarriageofFigaroOriginalPoster.jpg

User:Tamcgath claims, it is his own work, which is obviously a mistake Unknown author

 

フィガロの結婚全曲 (映画) 芸達者が揃っている、ヘルマン・プライはいい声だし、フィッシャー・ディスカウも良い。ミルレラ・フレーニは歌ばかりでなく芝居が物凄くうまいし、キリ・テ・カナワは非常に上品で内省的伯爵夫人。ユーイングのケルビーノも素晴らしい。


この作品は原作ボーンマルシェの有名な三部作、「セヴィリアの理髪師」「フィガロの結婚」「罪ある女」の「フィガロの結婚」をオペラ化したもの(台本はロレンツォ・ダ・ポンテ)。ロッシーニ作曲の「セヴィリアの理髪師」ではフィガロが大活躍してアルマヴィーヴァ伯爵とロジーナの結婚を取り持ちますが、その後日談が「フィガロの結婚」。フィガロはアルマヴィーヴァ伯爵の家臣に取り立てられています。

 

この戯曲は貴族階級を痛烈に批判したため度々上演禁止になっていましたのでモーツアルトは過激な批判を相当抜いて作曲しました。それにしても貴族批判ははっきりとわかりますが、この様な作品を上演できたのは当時の神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世(マリア・テレジアの息子)が教会・貴族勢力の弱体化を計っていた啓蒙君主であったのが一因かもしれません。とはいえ、モーツアルトは皇帝から厚遇されたわけではありません。

 

「フィガロの結婚」が作曲されたのは1786年。フランス革命勃発(1789年)のわずか3年前です。彼は翌年「ドン・ジョバンニ」も作曲しますがいずれの作品にも貴族階級への批判が読み取れます。

 

このオペラは多人数が入り乱れてのドタバタ喜劇です。たくさんのアリアと重唱が美しいですが芝居がうまい歌手たちが大袈裟に思い切り弾けて演じるのが観ていて楽しい。筋が入り組んでいて複雑なためあらすじ解説が長いです。

 

***** ***** ***** 

 

フィガロ:元々町のなんでも屋(床屋)だが現在は伯爵の家臣になっている。本日スザンナと結婚予定。知恵が回る。生き生きとしてたくましい庶民の象徴ともいえる。バリトンまたはバス

 

スザンナ:伯爵夫人の小間使い。フィガロと結婚する予定の庶民階級の娘。彼女も元気娘で賢く溌剌としている。ソプラノ

 

アルマヴィーヴァ伯爵: ロジーナと結婚したのは良いが現在は初夜権を復活してスザンナをものにしようと企んでいる。バリトン

 

伯爵夫人(ロジーナ):伯爵の自分への愛が冷めているのを嘆いている。しかし貴族の上品さを失わない大人の女性。ソプラノ

 

ケルビーノ:伯爵のお付き。思春期の男の子。女性なら誰にでも愛(欲望)を感じてしまいかたっぱしから女子を追いかけ回して騒動を巻き起こす。伯爵夫人にも恋心を抱いている。メゾソプラノまたはソプラノ

 

バルトロ:医者。「セヴィリアの理髪師」にも出てくる元ロジーナの後見人で彼女と結婚しようとしてフィガロに阻止された恨みがある。バス。

バジリオ:「セヴィリアの理髪師」にも出てきた音楽教師。テノール。

マルチェリーナ:伯爵家の女中頭 メゾソプラノ。

バルバリーナ:年若いスザンナの従姉妹。ソプラノ。

アントニオ:庭師。バルバリーナの父親でスザンナの伯父。バス 他 


序曲に続いて第1幕: 舞台は、おおよそ1780年頃。スペイン、セルビアに近いアルマヴィーヴァ伯爵の屋敷

 

第1〜5場: 本日はフィガロとスザンナが結婚する日。しかしスザンナは伯爵が初夜権を復活させて彼女を我がものにしようと企んでいることに気が付き、フィガロはその企みを阻止する計略を練る。

 

次にバルトロとマルチェリーナ登場。マルチェリーナは以前フィガロに金を貸しており「もし金を返せなかった場合フィガロは彼女と結婚する」と書いてある契約書を持ってくる。バルトロは「セヴィリアの理髪師」でロジーナと結婚できなかった復讐としてその契約書を利用しようと企む。

 

スザンナが一人でいるところにケルビーノ登場。彼は「バルバリーナと一緒にいるところを伯爵に見つかり首になりそうだからとりなしてくれ」とスザンナに頼む。どんな女性に対しても愛(欲望)を感じてしまう彼の心の動揺を歌うのが、”Non so piu cosa fon, cosa faccio,"「自分で自分がわからない」。

Liliana Nikiteanu チューリッヒ歌劇場 1996  日本語字幕付き


 

第6〜8場: そこに伯爵登場。慌ててケルビーノは隠れる。伯爵はスザンナを口説こうとするが今度はバジリオが来る。ここにいることを彼に知られるのは都合が悪い、と伯爵も隠れる。(ケルビーノと伯爵の隠れんぼ合戦が笑いを誘う)。

 

伯爵やケルビーノが隠れていることなど全く知らないバジリオが「ケルビーノが伯爵夫人に色目を使っている」と言ったので伯爵は怒って姿を表す。ケルビーノも見つかってしまい士官にされて城を追い出されることになる。(ここでバジリオが「女はみんなこうしたもの」 "Cosi fan tutte"と喋りますが、それが後のオペラの題名になります)

 

そこへ農夫と一緒にフィガロが登場し初夜権を廃止した伯爵を称えるので、伯爵も仕方なくそれを肯定する。フィガロは追い出されるケルビーノを励ます(より落ち込ませる?)ために  "Non più andrai, farfallone amoroso"「もう飛ぶまいぞこの蝶々」を歌う。よく知られたアリア。

ヘルマン・プライ 映画

Non più andrai, farfallone amoroso,

もはや恋の蝶々ではいられないぞ、

 

notte e giorno d'intorno girando;

昼も夜もこの城の周りを飛び回って;

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

Non più avrai questi bei pennacchini,

こんな素敵な長い羽毛もなし、

 

quel cappello leggero e galante,

柔らかくて粋な帽子もなし、

 

quella chioma, quell'aria brillante,

こんな素敵な巻き毛も、素晴らしい雰囲気も、

 

quel vermiglio donnesco color.

薔薇色の、女の子みたいな頬紅も

 

quel vermiglio donnesco color.

薔薇色の、女の子みたいな頬紅も

 

Non più avrai questi bei pennacchini,

こんな素敵な長い羽毛もなし、

 

quel cappello その帽子も

quella chioma その巻き毛も

quell'aria brillante, 華やかな雰囲気もなし、

 

Non più andrai, farfallone amoroso,

もはや恋の蝶々ではいられないぞ、

 

notte e giorno d'intorno girando;

昼も夜もこの城の周りを飛び回って;

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

Tra guerrieri, poffar Bacco!

バッカスに誓いを立てた兵士たちの中で!

 

Gran mustacchi, stretto sacco.

大きな口髭、リュックを背負って、

 

Schioppo in spalla, sciabla al fianco,

肩には鉄砲、サーベルは腰に、

 

collo dritto, muso franco,

頭を高くあげ、勇気を持って

 

un gran casco, o un gran turbante,

巨大なヘルメットかターバンをつけ、

 

molto onor, poco contante!

多くの名誉、給料はちょっぴり!

 

poco contante!

poco contante!

給料はちょっぴり!

 

Ed invece del fandango,

ファンタンゴを踊る代わりに、

 

una marcia per il fango.

泥の中を進む

 

Per montagne, per valloni,

山超え、谷超え、

 

con le nevi e i sollioni.

雪の中を、焼けつくような太陽の下を、

 

Al concerto di tromboni,

トランペットや

 

di bombarde, di cannoni, che le palle in tutti i tuoni

爆弾や雷のような音のする弾丸の大砲の音の合奏で、

 

all'orecchio fan fischiar.

耳鳴りがするだろうよ。

 

Non più avrai quel pennacchini,

その羽毛もなし

 

Non più avrai quel cappello 

その帽子もなし

 

Non più avrai quella chioma,

その巻き毛もなし

 

Non più avrai quell'aria brillante.

華やかな雰囲気もなし。

 

Non più andrai, farfallone amoroso,

もはや恋の蝶々ではいられないぞ、

 

notte e giorno d'intorno girando;

昼も夜もこの城の周りを飛び回って;

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

delle belle turbando il riposo

可愛い女の子を心配させおって

 

Narcisetto, Adoncino d'amor.

ナルシス、アドニスよ。

 

Cherubino alla vittoria:

ケルビーノ、勝利を目指せ、

 

alla gloria militar.

戦いでの勝利だ。

 

Cherubino alla vittoria:

ケルビーノ、勝利を目指せ、

 

alla gloria militar.

alla gloria militar.

alla gloria militar.

戦いでの勝利だ。

 


 

第2幕 伯爵夫人の部屋

第1場: 伯爵夫人は夫の愛が冷めてしまったことを嘆き "Porgi, amor, qualche ristoro" 「愛の神よ、照覧あれ」を歌う。高貴な婦人の悲しみを描いた極めて美しいアリア。

キリ・テ・カナワ 映画

Porgi, amor, qualche ristoro

愛の神様、私に愛と安らぎを与えてください

 

Al mio duolo, a' miei sospir!

私の苦しみとため息に!

 

O mi rendi il mio tesoro,

さもなければ、私に私の宝をお返しください、

 

O mi lascia al men morir,

O mi lascia al men morir!

さもなければ、せめて私に死をお与えください、

 

Porgi, amor, qualche ristoro

愛の神様、私に愛と安らぎを与えてください

 

Al mio duolo, a' miei sospir.

私の苦しみとため息に!

 

O mi rendi il mio tesoro,

そうでなければ、私に私の宝をお返しください、

 

O mi lascia al men morir,

さもなければ、せめて私に死をお与えください、

 

...al men morir,

...せめて死を、

 

O mi rendi il mio tesoro,

そうでなければ、私に私の宝をお返しください、

 

O mi lascia al men morir.

さもなければ、私に死をお与えください、

 


 

第2場: 夫人とスザンナがいるところにケルビーノが登場し、二人に "Voi che sapete"「恋とはどんなものかしら」を歌う。誰でも知っている有名なアリア。

Rinat Shaham ROH 2011

Voi che sapete che cosa è amor,

あなた方は愛がどんなものかご存知でいらっしゃる、

 

donne, vedete s'io l'ho nel cor.

donne, vedete s'io l'ho nel cor.

ご婦人方、私の心に愛があるかご覧になってください。

 

Quello ch'io provo vi ridirò,

僕が感じたことを、あなたがたにご説明いたします。

 

è per me nuovo, capir nol so.

僕にとっても新たなことなので、僕には理解できません。

 

Sento un affetto pien di desir,

欲望に満ちた情念を感じます、

 

ch'ora è diletto, ch'ora è martir.

今は喜びでもあり、苦しみでもあります。

 

Gelo e poi sento l'alma avvampar,

心が凍りついたかと思うと、燃え上がるのです、

 

e in un momento torno a gelar.

そしてあっという間にまた凍りついてしまう。

 

Ricerco un bene fuori di me,

他の人からの恩恵を求めますが、

 

non so chi'l tiene, non so cos'è.

それが誰からか、かもわかりませんし、それが何かもわかりません。

 

Sospiro e gemo senza voler,

意味もわからずため息をつき、苦しみます、

 

palpito e tremo senza saper.

それが何かも知らずにドキドキし、震えるのです。

 

Non trovo pace notte né dì,

昼も夜も心が落ち着きません、

 

ma pur mi piace languir così.

それなのに、思いこがれるのです。

 

Voi che sapete che cosa è amor,

愛がどんなものかご存知でいらっしゃる、

 

donne, vedete s'io l'ho nel cor.

donne, vedete s'io l'ho nel cor.

donne, vedete s'io l'ho nel cor.

ご婦人方、私の心にそれがあるかご覧になってください。

 


 

第3〜12場: 夫人とスザンナがケルビーノに女装をさせている最中に伯爵が登場。慌ててケルビーノを別部屋に隠しスザンナも隠れるが、伯爵は疑心暗鬼となり別部屋の鍵を探しに夫人とともに部屋を去る。その後スザンナはケルビーノを窓から逃す。

 

伯爵と夫人が戻り鍵を開けるが中からはケルビーノの代わりにスザンナが出てくる。そこにフィガロ登場。マルチェリーナ、バジリオ、バルトロが伯爵に契約書を見せフィガロは大ピンチに陥る。

 

第3幕:婚礼の支度をしている豪華な大広間。

 

第1〜8場: 夫人とスザンナは伯爵を罠にかける準備をしている。スザンナは伯爵に後で庭に来るよう誘い、伯爵はすぐにその誘いに乗ってフィガロに復讐ができると大喜び。

 

フィガロに対する訴訟の裁判でなんとフィガロがバルトロとマルチェリーナの子供だということがわかり、マルチェリーナとの結婚は無し。結局フィガロとスザンナ、バルトロとマルチェリーナの2組の結婚式を挙げることになる。

 

一方、伯爵夫人は夫の愛を取り戻すために小間使いに頼らねばならない自分を嘆く有名なアリア "Dove sono i bei momenti" 「楽しい思い出はどこに」を歌う。これも悲しみに満ちた印象的なアリア。

Kiri Te Kanawa

 

アリア

 

Dove sono i bei momenti di dolcezza e di piacer,

あの甘く喜びに満ちた素晴らしい時はどこに行ってしまったの、

 

dove andaro i giuramenti di quel labbro menzogner?

不誠実な口から出たあの誓いはどうなったの?

 

di quel labbro menzogner?

不誠実な口から出た(あの誓いは)?

 

Perché mai se in pianti e in pene per me tutto si cangiò,

私の生活は全て涙と苦痛に変わってしまったのに、

 

per me tutto si cangiò,

私にとって全て変わってしまったのに、

 

la memoria di quel bene dal mio sen non trapassò?

記憶に残る喜びが私の胸から消え去らないのはなぜ?

 

la memoria di quel bene non trapassò?

記憶に残る喜びが消え去らないのは?

 

Dove sono i bei momenti di dolcezza e di piacer,

あの甘く喜びに満ちた素晴らしい時はどこに行ってしまったの、

 

dove andaro i giuramenti di quel labbro menzogner?

不誠実な口から出たあの誓いはどうなったの?

 

Ah! Se almen la mia costanza nel languire amando ognor,

ああ、この悲しみがあってもまだ私の愛が変わらないなら、

 

mi portasse una speranza di cangiar l'ingrato cor.

あの恩知らずの心を変える希望はまだ残っている。

 

di cangiar l'ingrato cor.

あの恩知らずの心を変える。

 

Ah! Se almen la mia costanza

私の変わらない心が

 

Ah! Se almen la mia costanza nel languire amando ognor,

ああ、この悲しみがあってもまだ私の愛が変わらないなら、

 

mi portasse una speranza di cangiar l'ingrato cor.

mi portasse una speranza di cangiar l'ingrato cor.

あの恩知らずの心を変える希望はまだ残っている。

 

di cangiar l'ingrato cor.

di cangiar l'ingrato cor.

di cangiar l'ingrato cor. 

あの恩知らずの心を変える。

 

l'ingrato cor.

l'ingrato cor.

あの恩知らずの心を.

 


第9、10場: 夫人とスザンナは伯爵を罠をかけるため伯爵とスザンナとの逢引の場所を指定した手紙を書く。ここが有名な手紙の二重唱 "Sull'aia Che soave zeffiretto"「優しい微風が」。(この歌は映画「ショーシャンクの空」で効果的に使われています。参考 おたく記事「映画とオペラ7:ショーシャンクの空」。極めて美しい二重唱です。)

キリ・テ・カナワ(伯爵夫人)、ミルレラ・フレーニ(スザンナ)

伯爵夫人

Scrivi. 書いてちょだい。

 

スザンナ

Ch'io scriva... ma, signora...

私が書く... しかし、奥様...

 

伯爵夫人

Eh, scrivi dico; 

ええ、私が言うように書いて頂戴;

 

io prendo su me stessa.

私がやるから。

 

"Canzonetta sull'aria..."

そよ風によせるカンツォネッタ

 

スザンナ

"Sull'aria..."

そよ風によせる...

 

伯爵夫人

"Che soave zeffiretto..."

優しいそよ風が...

 

スザンナ

"Zeffiretto..."

そよ風が...

 

伯爵夫人

"Questa sera spirerà..."

今宵吹き渡ります...

 

スザンナ

"Questa sera spirerà..."

今宵吹き渡ります...

 

伯爵夫人

"Sotto i pini del boschetto."

茂みの松の木陰で。

 

スザンナ

"Sotto i pini..."

松の木陰で

 

伯爵夫人

"Sotto i pini del boschetto."

茂みの松の木陰で。

 

スザンナ

"Sotto i pini...del boschetto..."

茂みの松の木陰で。

 

伯爵夫人

Ei già il resto capirà.

あとはわかるわよね。

 

スザンナ

Certo, certo il capirà.

ええ、ええ、お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人&スザンナ

Ei già il resto capirà. あとはわかるわよね。

Certo, certo il capirà. ええ、ええ、お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人

"Canzonetta sull'aria そよ風によせるカンツォネッタ

 

スザンナ

Che soave zeffiretto.  優しいそよ風が...

 

伯爵夫人

Questa sera spirerà.  今宵吹き渡ります...

 

スザンナ

Sotto i pini del boschetto 茂みの松の木陰で。

 

伯爵夫人

Ei già il resto capirà.  あとはわかるわよね。

 

スザンナ

Certo, certo il capirà.  ええ、ええ、お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人

il capirà わかるわね。

 

スザンナ

il capirà お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人 & スザンナ

Ei già il resto capirà. Ei già il resto capirà.

あとはわかるわよね。

Certo, certo il capirà. Certo, certo il capirà.

ええ、ええ、お分かりになりますわ。

 

スザンナ

il capirà.  お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人

il capirà. il capirà. わかるわね。

 

スザンナ

il capirà.  お分かりになりますわ。

 

伯爵夫人 & スザンナ

il capirà. il capirà.

わかるわね。お分かりになりますわ。

 


第11〜14 場: 結婚式が始まり隙を見てスザンナは伯爵に手紙を渡す。

 

第4幕: 庭の東屋

 

第1〜10場: 伯爵がスザンナに返信するために使ったピンをバルバリーナに渡すが、それをフィガロに知られ、彼はスザンナが自分を裏切ったと思い怒る。

 

伯爵とスザンナの密会場所に伯爵以外の男性群と女性陣ほぼ全員が登場し隠れる。スザンナと伯爵夫人は衣装を取り替えてお互いの姿に化けている。スザンナはフィガロが隠れていることに気がつき、フィガロへの愛を歌う。これも有名な "Deh, vieni,non tardar, oh gioia bella"「とうとう嬉しい時が来た」。フィガロはスザンナと伯爵夫人の計略に気づく。

Lucia Popp パリガルニエ 1980

Giunse alfin il momento che godrò senz'affanno

憂いなく楽しめる時がとうとうきたわ

 

in braccio all'idol mio.

私の崇拝する方の腕の中で。

 

Timide cure, uscite dal mio petto,

恥ずかしいなんて気持ちは私の胸から出て行って、

 

a turbar non venite il mio diletto!

私の喜びを邪魔しないで!

 

Oh, come par che all'amoroso 

おお、まるで愛の炎に、

 

focol'amenità del loco,

この心地よい場所、

 

la terra e il ciel risponda,

地と天が答えているようだわ、

 

come la notte i furti miei seconda!

夜が私の試みを助けてくれる!

 

Deh, vieni, non tardar, oh gioia bella,

きて頂戴、遅れないで、ああ、愛しい喜びよ、

 

vieni ove amore per goder t'appella,

楽しみのために愛が呼びかけるところにきて頂戴。

 

finché non splende in ciel notturna face,

空に灯りが灯らないうちに、

 

finché l'aria è ancor bruna e il mondo tace.

空気がまだ暗く、世界が静まっているうちに。

 

Qui mormora il ruscel, qui scherza l'aura,

小川はさらさらと流れ、そよ風が遊んでいるよう、

 

che col dolce sussurro il cor ristaura,

優しいささやきで心が蘇るわ、

 

qui ridono i fioretti e l'erba è fresca,

ここには花々が咲き乱れ、草々は爽やか、

 

ai piaceri d'amor qui tutto adesca.

愛の喜びへと誘っているわ。

 

Vieni, ben mio, tra queste piante ascose,

きて頂戴、私の愛しい人、この隠れた茂みの中に、

 

Vieni, vieni, ti vo' la fronte incoronar di rose.

きて頂戴、きて頂戴、あなたの額を薔薇の花で飾りたいわ。

 

ti vo' la fronte incoronar 

あなたの額を薔薇の花で飾りたいわ

 

incoronar di rose.

薔薇の花で飾りたいわ

 


第11〜14 場: 伯爵登場。スザンナの装いをした伯爵夫人をスザンナと思いこみ夫人を誘うが夫人は伯爵をうまくかわして立ち去る。伯爵は伯爵夫人に化けたスザンナとフィガロが一緒なのを見つけ激怒するが、本当の伯爵夫人が扮装を解いて現れついに全ての企みが明らかとなる。

 

伯爵は潔く"Contessa, perdono!"「伯爵夫人、私を許してくれ」と詫びをいれ夫人は許す。全員が高らかに喜びを歌い幕。

Renee Fleming, Cacilia Bartoli, Bryn Terfel, Dwayne Croft,

Met 1999


(2021.06.05 wrote)  オペラ解説に戻る。