「サンドラ・ラドヴァノフスキー」 (Sondra Radvanovsky)

2011 MET 「トスカ」第2幕 "Vissi d'arte, vissi d'amore"


 

アメリカ生まれのソプラノ歌手。1969年生まれでヨナス・カウフマンと同い年。アメリカおよびカナダ国籍を所有。代表的なヴェルディソプラノであると同時にドニゼッティやベッリーニを歌うベルカントソプラノとしても有名。METのライブビューイングでもお馴染みのソプラノです。

 

デビューして以降、ヴェルディソプラノとして「イル・トロヴァトーレ」「椿姫」「ドン・カルロ」「シモン・ボッカネグラ」「シシリアの晩鐘」「アイーダ」「仮面舞踏会」などを歌っています。一方ベルカントオペラの最高峰「ノルマ」やドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」「マリア・スチュアルダ」「ロベルト・デヴェリュー」と、チューダー朝の3女王を歌って絶賛を博しています。

MET2017「ノルマ」 "Casta Diva"


私が最近彼女を聞いたのは2021年パリオペラ座のストリーミング「アイーダ」。特に第3幕「おお我が故郷」の難しいフレーズを滑らかに、そして最後の最難関 E♭からピアニシモのままゆっくりと順繰りに音を上げていき最後のハイCを甘く柔らかく歌うという離れ業を驚愕のテクニックでやってのけました。唖然とするほどの柔らかく美しいハイC!全くもってカウフマン・ラダメスの十八番、有名なピアニシモさえ忘れさせるほどの素晴らしさでした。

 

もっとも彼女は以前声帯の手術をして、その後ちゃんとした発声ができるようになるまでは何年もかかったそうで、努力の人でもあるのです*。

 

とはいえ、iltrovatoreは最初から彼女のファンだったわけではありません。彼女は声量(相当大声)も技術もあり,芝居もうまく、声質もマリア・カラスと似ていると言われているのですが、私は彼女の高音での強いビブラート(この点でもカラスと似ている)が苦手でイマイチ敬遠したいソプラノだったのです。

 

しかしチューダーの女王役の彼女を聞いているうちにだんだんそのビブラートが気にならなくなったのが不思議です。というか彼女の大揺れのビブラートが最近小波になっていると感じています。近年カウフマンと共演した「アンドレア・シェニエ」や「アイーダ」などを聞いていてもそのように感じるのは私の気のせいでしょうか?それとも私が彼女の声に慣れてしまった?

 

彼女は最近プッチーニ(トスカ、マノン・レスコー)やヴェリズモ(アンドレア・シェニエ)も歌っています。ヴェルディとベルカントとヴェリズモ、、、ヴェルディにはベルカントな部分もあるとはいえ、この3つの領域を行き来しながら色々な劇場で歌い続けられるのは彼女が相当な歌唱技術と表現力を持っている証でしょう。

 

が、彼女が歌わないオペラもあります。それはモーツアルトとワーグナーの作品です。

 

「モーツアルトは歌手にとってメディスン(薬)と言われるけれど私の声にとっては拘束衣のようなもの」「ワーグナーは歌いません。ドイツ語ができないし、ワーグナーは私に語りかけてこないから」* だそうです。

 

ちなみに彼女のご主人は彼女のマネージャーでいつでもどこでも二人一緒というラブラブ生活をしているらしいです*。

 

、、、と書いたんですが、最近(半年か一年前くらい?忘れました)に離婚しちゃいました。(追記2023.9.12)

 

*: Classic Talk with Bing & Dennis with Soprano Sondra Radvanovsky 

 

(2021.10.01 wrote)  番外地に戻る