夫婦でオペラ

 Roberto Alagna / Aleksandra Kurzak 


現在、有名なオペラ歌手(ソリスト)達は多くの場合「旅人生」を送ることが運命つけられていて、「今日はロンドン、明日はパリ、そして明後日はニューヨーク」と世界中を歌って回ることになります。夫婦がオペラを職業としているとすれ違いが当たり前で一緒に過ごせる時間は相当限定されてしまいます。

 

しかし彼らにとって音楽は命。旅周りの音楽人生と夫婦生活を両立させるために色々と努力なさっているのでしょう。今回は歌手と歌手、そして歌手と指揮者という組み合わせでそれぞれが世界を飛び回っている著名な御夫婦達を紹介します。

 

思いついたままに書いていますので、順不同。抜けているカップルがあれば教えてください。

 

過去に有名だったカップル

 

ミルレラ・フレーニ(ソプラノ)/ニコライ・ギャウロフ(バス)  Mirella Freni/Nikolaj Gjaurov

フレーニはイタリア、ギャウロフはブルガリア出身、二人とも超一流のオペラ歌手達でした。結婚後は仲良く共演していました。ニコライ・ギャウロフは2004年、Mirella Freni2020年没。

 

ジョーン・サザランド(ソプラノ)/リチャード・ボニング(指揮者) Joan Sutherland/Richard Bonynge

両方ともオーストラリア出身。ボニングは、ドラマチックなソプラノとしてはあまり売れていなかったサザランドをベルカントオペラの世界に誘導し、彼女は偉大なベルカント歌手となりました。そして、夫婦共々、当時は人気のなかったベルカントオペラの再興に尽力しました。 ジョーン・サザランドは2010年没。

 

現役のカップル達:

 

ロベルト・アラーニャ(テノール)/アレクサンドラ・クルジャク(ソプラノ) Roberto Alagna/Aleksandra Kurzak

アラーニャはイタリア移民の息子でフランス生まれ。前妻のソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギューとの共演でいくつもの名DVDなどを残しています。彼女と離婚後彼はポーランド出身のクルジャクと再婚しました。クルジャックはMETなどでもよく歌っています。安定した家庭を築いているようで、二人はしばしば共演しています。二人の間にはお子さんが一人いらっしゃいます。

 

ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)/ニコラ・テステ(バス) Diana Damrau/Nicola Testé

ダムラウはドイツ出身。ダムラウは「魔笛」の夜の女王役で有名な人気のコロラトゥーラソプラノ。フランス出身のテステはバス歌手ですが高音にも強くバスバリトンと言われたりもします。夫婦で来日してコンサートをしています。お子さんが二人おられます。

 

ニコラ・カー(ソプラノ)/エティエンヌ・デュプイ(バリトン) Nicola Car/Étienne Dupuis

デュプイはカナダモントリオール出身でフランス語(多分英語も)ネイティブ。彼は2024年のROH来日公演で主役のリゴレットを歌っています。カーはオーストラリア出身でフランス語も堪能。リリカルな美声ソプラノ。確かお子さんが一人おられたはず。

 

チャールズ・カストロノヴォ(テノール)/エカテリーナ・シウリーナ(ソプラノ)Charles Castronovo/Ekaterina Siurina

カストロノヴォはアメリカ、シウリーナはロシア出身。二人には面白い逸話(FAB UK 2020.1.13  )があります。何年か前、シウリーナがROHで「ボエーム」のミミを歌っていた時、2幕目でルドルフォ役のアタラ・アヤン(今季の新国立でドン・ホセを歌う予定のテノール)が歌えなくなりました。丁度その時観客として奥さんの舞台を見ていたカストロノヴォが快く代役を引き受け、演技をするアヤンの舞台袖で彼の代わりにルドルフォを歌いました。彼は危機に瀕したショーを助けたわけで、とても感謝されたことでしょう。

 

スティーブン・コステロ(テノール)/アイリーン・ペレス(ソプラノ) Stephen Costello/Ailyn Perez

コステロはアメリカ出身、容姿端麗なリリックテノールです。ペレスはメキシコ系移民の子供でアメリカ生まれ。彼女は2023/24シーズンMETでスペイン語オペラの「アマゾンのフロレンシア」の主役を歌っています。

 

訂正:すでに離婚しているという情報をいただきました。申し訳ありません。(2024.10.24)

 

フランチェスコ・メーリ(テノール)/セレーナ・ガンベローニ(ソプラノ) Francesco Meli/Serena Gamberoni

夫婦ともイタリア出身。メーリは世界的にもトップ歌手の一人なのによく来日し美声を聞かせてくれるありがたいテノール。上に並べたカップル達と比べ奥方の知名度は今一歩ですが、世界のトップ歌劇場で歌っています。3人のお子さんがいらっしゃいます。

 

ナタリー・デセイ(ソプラノ)/ロラン・ナウリ(バスバリトン) Natalie Dessay/Laurent Naouri

両方ともフランス出身。世界的に人気者だったデセイですが現在はオペラ舞台から引退しています。ナウリは2022年に新国立で「ペレアスとメリザンド」のゴローを歌っていました。お子さんは二人。

 

エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)/カレル・マーク・チチョン(指揮者)  Elīna Garanča /Karel Mark Chichon

圧倒的な人気を誇るガランチャはラトビア出身のメゾソプラノ歌手。チチョンは英国出身の指揮者。インタビューを読む限り夫婦仲は良いです。二人は頻繁に共演しています。お子さんは二人。

 

ヨンチェヴァ(ソプラノ)/ドミンゴ・インドヤン(指揮者) Sonya Yoncheva/Domingo Hindoyan

インドヤンはベネズエラ出身。ブルガリア出身のヨンチョヴァと結婚10周年を迎え、二人のお子さんがいらっしゃいます。ただこの二人が一緒に仕事をすることはあまりありません。それは「それぞれが別々のキャリアを持ち、お互いの道を尊重すべき」と考えているからだそうです(Opera Now 2024.7.11 Ashutosh Khandekar) 

 

サイモン・ラトル(指揮者)/マグダレーナ・コジェナー(メゾソプラノ) Simon Rattle/ Magdalena Kožená

世界的に人気のある指揮者ラトルはイギリス出身、コジェナーはチェコスロバアキア出身で3人のお子さんがいらっしゃいます。何せラトルが有名なので比較すると影が薄れてしまいそうなコジェナーですが、古楽にも強い実力者。

 

(2024.10.22 wrote) おたく記事に戻る