2024.4.25
またバイエルン歌劇場の「アイーダ」にキャストチェンジ。25日の公演ではアムネリスをEkaterina Semenchukが歌います。
Damiano Michieletto’s production of “Aida” will fill the stage of the @bay_staatsoper tonight, as Elena Guseva (Aida), Ekaterina Semenchuk (Amneris), George Petean (Amonasro) and I perform Verdi’s epic opera under the baton of Marco Armiliato. pic.twitter.com/1tOo1cQ8YI
— Jonas Kaufmann (@tenorkaufmann) April 25, 2024
2024.4.22
あんれま、またバイエルン歌劇場の「アイーダ」でキャストチェンジがありました。カウフマンではありません。アニタ・ラチヴェリシュヴィリのキャンセルを受けて代役に立ったEve-Maud Hubeaux (ザルツブルクとテアトロ・サン・カルロのジョコンダに出演したメゾソプラノ) が病気でジェイミー・バートンに変わりました。ただし21日の公演のみの代役のようです。
2024.4.21
評論「ラ・ジョコンダ」公演 Teatro San Carlo公演を読んで。
10日のプレミエに関して「カウフマンとネトレプコが成功をもたらした。彼らの歌は優雅でフレージングは自然。彼女は完璧だが、彼は少々トラブルあり。・・・・テジエは素晴らしい。」 と書いた評論 (1: Giornale della Musica) が有りましたが、カウフマンのトラブルは相当だったようで、
「有名なアリア “Cielo e Mar” では咳払いが多く、レガートラインを通すのに苦労していた。・・・・彼が苦労しているのは自明だった。しかし彼は(現在の状況に) 妥協せず、アリアに対する彼の芸術的ヴィジョンを損なわないよう最善を尽くしていた。」(2: Operawire)
「彼は素晴らしい存在感、テクニック、優れた音色を持っている。しかし彼の声は非常に疲れているように聞こえた」(3: bachtrack) などと書かれています。
ところがOperawireは、1回目と2回目の公演両方を見たDavid Salazarによる補筆記事を追加しました(2)。その理由は2回目の公演内容が1回目と著しく異なっていたからです。
補筆記事を書いたDavid Salazarさんはその底知れないオペラの知識( 全てのオペラの台本や楽譜をほとんど誦じているのではないかと思えるほど。声楽に対する知識も深い。)、音楽に対する鋭い感性、冷静な評価で私が最も尊敬かつ信頼する評論家です。
彼は「1つのパーフォーマンスだけを見て公演を評価するのには限界がある。複数のパーフォーマンスを見て評価するという考えに賛同する。それゆえ今回の追加記事を書くことにした。」と言っています。
その追加記事(2)では、
「確かに1回目の公演は主要な歌手達 (アンナ・ネトレプコとヨナス・カウフマンのこと) が公演を歌いこなせるかどうか心配した。」ちなみにネトレプコも調子が悪く、「最後の幕直前でほとんど声を失ったが歌い続けることに決めた」ことをソーシャルメディアで認めているそうです。
「カウフマンの初日は絶え間ない咳払いだった。しかし2回目は違った。レガートのラインの一部にまだ瑕疵があり、中音域にいくつかの音の乱れがあったものの、”Cielo e mar” はカウフマンの最高の状態であり、ラインは滑らか、柔軟性のある声で、このテノール歌手が最初の夜にしようとしていたのと同じ情熱的な表現だった。」
「(アリアの)最後のBフラットは、彼の十八番であるメッツァ・ディ・ヴォーチェで輝かしく歌った。・・・・聴衆は彼の演奏に熱狂し、”Cielo e mar” の終わりを盛大な拍手で迎えた。」「それはビンテージのカウフマンでパーフォーマンスの間ずっとテナーは最高の状態を保ち続けた。」
と書かれています。さらに、
アンナ・ネトレプコも復活。彼女とカウフマンとの絡みも前回よりリラックスして大胆。さらに彼女とテジエのやりとりも素晴らしく改善されていたようです。書き遅れましたが、リュドヴィック・テジエはほぼ完璧で、どの評論でも絶賛されていました。
最後に「この2回目の公演が1回目の公演に期待していた全てを満たしていた。」とDavid Salazarさんは書いています。
ところで、1回目の公演にはカメラが入っていたが、2回目の公演にカメラは見当たらなかったそうです。3回目の公演はどうだったか不明。
1. Giornale della Musica, 12 APRIL 2024, by Salvatore Morra
2. Operawire April 12,2024, by Francisco Salazar + 追記 by David Salazar
3. Bachtrack 12 April 2024, by Lorenzo Fiorito,
(2024.4.20 wrote)
2024.4.20
テアトロサンカルロでの全4回の公演は16日に終わりました。が、1回目と2回目の評価が全く異なるという珍しいケースになりました。評論は近々に。
Grazie, Naples! As always, I enjoyed my time @teatrosancarlo for“La Gioconda,” and look forward to returning!
— Jonas Kaufmann (@tenorkaufmann) April 19, 2024
📸: Christine Cerletti pic.twitter.com/XKGkMIvFYi
2024.4.15
テアトロサンカルロでの公演は残り一回。
“Enzo Grimaldo, principe di Santafio”
— Teatro San Carlo (@teatrosancarlo) April 13, 2024
Questa sera al Teatro di San Carlo @tenorkaufmann è Enzo Grimaldo, il nobile genovese proscritto da Venezia, che si nasconde nella città come semplice marinaio, nell’opera di Amilcare Ponchielli La Gioconda con la regia di Romain Gilbert. pic.twitter.com/iIOG4uU7IF
2024.4.13
最近のグラモフォンインタビュー記事を読んでの感想(2)。4.11に投稿した(1)の続きです。
「トゥーランドット」に関して、
彼は2022年、アントニオ・パッパーノと共にアルファーノの補筆完成版で「トゥーランドット」を収録しています(CD版)。彼はこの版を好んでおり、今回のインタビューでも「この版以外のバージョンで歌うつもりはない」と言っています。
その理由は、補筆完成版の方が物語の流れとして自然だから、と言うことを以前のインタビューでも今回でも言っています。(ちなみに、補筆完成版ではトゥーランドットがカラフを愛するようになる心境の変化がよりはっきりと表現されています、iltrovatore)。
このオペラの難しさについて、彼は「この作品には、言ってみれば、作曲家が通常避けようとする『過ち』でいっぱいです。美しいフレーズを次に1音、その次にまた2音と音程を上げて繰り返します。このような音楽の作り方はオーケストラのために書かれたものだと素晴らしく聞こえますが、歌手にとっては極めて大変です。なぜなら、休む間がないからです。」(ついでに言えば、これらのフレーズは最高音が半端なく高くしかもガンガンフォルテで歌うのでより大変。iltrovatore)。
「このように大変なことがまさに、アルファーノの補筆部分にもあるのです。・・・ オーケストレーションは美しいですが巨大で、コーラスナンバーは息をのむほど巨大・・・とんでもない傑作ですよ。」と言っています。ちなみにウイーンでの「トゥーランドット」はDVDになるらしい。
これから演じたい役について、
「フェドーラ」は面白いでしょう。「仮面舞踏会」もやり残しているのでやるべきだと思っています。「ペレアス」は演じてみたい。私が歌えるブリテンの作品がいくつかあります。ジークフリートはやるかどうかわからないですが、第3幕をコンサート方式でやるかもしれません。トリスタンは1回やっただけだが是非やりたい。
更に、「影のない女」の皇帝は興味深いです。「サロメ」のヘロデには非常に難しいところがあるので歌うのならあまり長く待つべきではないでしょう。と述べています。
テジエとの二重唱について、
二重唱 “INSIEME”アルバムを制作したときのことを述べているのでしょう。コロナの最中に作ったそうですが、「我々の声はコーヒーとクリームのブレンドのように上手く調和していました。それぞれの声を区別するのも難しいほどに声質の違いはなく、我々の声はお互いに溶け合っていました。」と言っています。
私もこのCDを購入したのですが、「双子のザ・ピーナツが歌っている様に二人の声質が似ている」、と感じたのを覚えています。(例えが古いか、、、) (2024.4.12 wrote)
2024.4.11
グラモフォン、インタビュー記事を読んでの感想(1)。
Gramophone by Mark Pullinger 2024.4.5
このインタビューはGramophone3月号に掲載されたものですが、4月にネット公開されました。
ヨナス・カウフマンの「パルジファル」に対する想いやプッチーニのオペラの特性(特に「トゥーランドット)」などに対する考えがよく表されていて面白かったです。
とにかく長〜〜いインタビューなので、私の興味を引いた部分だけを感想を交え書いてみます。私が飛ばした部分にも面白いことがたくさん出ていたのでインタビュー全体をご覧になりたい方はこちらの元文をお読みください。
インタビューの多くを占めるのは「パルジファル」関連記事。ウイーン歌劇場での無観客公演「パルジファル」のCDが売り出されたのでその宣伝もあるのでしょう。彼は今回のCDについて共演者エリナ・ガランチャ、ルドヴィク・テジエ、ゲオルグ・ツェッペンフェルトを賞賛していますが、演出については批判しています。
彼は以前から「演出家は作曲者の意図を尊重しなければならない。もし演出家が作曲家の意図を無視し、演出家独自の考えでオペラを上塗りしようとすると音楽と演出とが乖離する。そうすると歌手が舞台で心を込めて歌うのが難しくなる」と力説しています。今回も似たようなことを、角が立たないように婉曲的で抽象的な一般論として語っています。
彼としては、今回の「パルジファル」は(DVDでなく)CDで出すのが良いと思っているようです。
もう一つ私が興味を持ったのはワーグナー作品の歌い方とテノール役の特性について
彼によれば「ドイツ語はザラザラしていて滑らかではないと評価されている。それなのに(そのドイツ語を)可能な限りレガートで歌わねばならないのは― とりわけネイティブスピーカーにとって ー大変な挑戦である」。
「ワーグナーの役は歌うよりも吠えることが多かった時代があった。ワーグナー歌いとしてはオーケストラピットを超えて歌の大きなラインを観客に届ける強力なパワーを持たなければならない。しかし同時に美しさ、新鮮さ、そして真のワーグナーを理解するために必要なベルカント的フレーズを持たなければない。」とおっしゃっておられます。
(ただし上記は彼の主張です。ワーグナーの歌い方に関して異なった考えを持っているグループも存在します。Iltrovatore)
又テノール役の音域について、「一般的にヴァルター、ローエングリン、タンホイザーなどは比較的高いテッシトゥーラ(音域)部分がある。一方パルジファルとジークムントは相対的に低い。パルジファル、そして更に低く英雄的なサウンドが必要なジークムントを歌うのは自分にとって比較的楽」と述べています。
いずれにしても、「ワーグナーの高音はA♭かA、それがマックス。」とおっしゃっていますが、本当ですか?もしご存じの方がいらっしゃいましたらお教えください。
ちなみに、彼はもともと広い音域を持つ歌手ですが、「自分は男性の全音域を持っていて、誰も聞きたくはないだろうが、理論的にはザラストロも歌える」と言っています! 確かザラストロは低音Fまであってバス歌手でもこの音を美しく響かせるのは難しいです。
次回はプッチーニその他、および将来歌いたい役についてのコメントです。(2024.4.10 wrote)