アンニャ・ハルテロス (Anja Harteros)

 

 日本ではあまり知られていない彼女です。しかしヨーロッパでは非常に有名で、歌がうまく、品が有り、美しく、芝居もうまい。私的にはネトレプコに次ぐ超一流ソプラノである、と考えております。

 

彼女は現在ドイツを中心に活動しておりヨーロッパ大陸以外には滅多に出演しません。イギリスのROHには滅多に出演しないし、パリ・オペラ座などのキャンセルも多い。ま、とにかくハルテロス目当てでパリ・オペラ座に出かけ、本当に彼女が出演して歌うのを聞くと「ああ、ラッキー」と感じてしまいます。

 

彼女は1999年の ”BBC Cardiff Singer of the World competition" で優勝し、ドイツ人では最初の優勝者として一躍有名になりました。ちなみにその後もドイツ人でこのコンペティションに優勝した歌手はいません。

 

初期はモーツアルト作品をよく歌っていましたが、だんだんと重いレパートリーに移行し、近年はワーグナー「ワルキューレ」のジークリンデや「ヴェルディ「アンドレア・シェニエ」のマッダレーナなども歌っています。

 

自分の命を賭けてシェニエを救おうとジェラードに自分の悲惨な身の上とシェニエへの愛を語る。ドラマチックで聞く人の共感を誘い深い感銘を与える。


彼女はバイエルン歌劇場を中心として活躍しており、やはりこの劇場を中心としているカウフマンとの共演も多く(二人の相性も良い様に思われます)、「ローエングリン」「ドン・カルロ」「トスカ」「イル・トロバトーレ」「運命の力」「アンドレア・シェニエ」「オテロ」などたくさんのオペラを二人で歌っています。2021年夏には「トリスタンとイゾルデ」で共演予定です。

 

一見物静かに見える彼女ですが、自分のプライベートな生活、"quality of life" を最重要視する、という価値基準をきっちりと守り、実行していらっしゃるように見えます。

 

例えば、オペラ活動をドイツ近辺の非常に限定された地域でしかやりません。また彼女はSNSをやりませんし、ご自分の宣伝用HPも作っていません(私は発見できませんでした)。これはプロ歌手として非常に珍しいことです。ここまで徹底するか、と思います。私の知る限りインタビューでもご自分のプライベートは話しません。

 

もう一つ、彼女はワーグナーを歌える歌手、しかも待ち望まれる歌手でありながらバイロイトにはほぼ出演しないと言っていいでしょう。何年か前にバイロイトでの「ローエングリン」に一度出演したことがあるきりですが、それもネトレブコの代役でした。何か考えるところがあるのかもしれません。

 

彼女はミュンヘン宮廷歌手の称号を得ていますし、バイエルン功労勲章も授与されています。またミュンヘン歌劇場から「マイスタージンガー」メダルを贈られています。 ( 2017.3.11& 2018.8.20 wrote, 2021.3.11改訂) 番外地へ戻る