ジャック=ルイ・ダヴィッドはフランスの画家で下の「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」等、歴史をドラマティックに切り取ったような絵画で有名です。
フランス革命時、過激で急進的なジャコバン派指導者の一人ジャン=ポール・マラーは対立するジロンド派を激しく攻撃したため、ジロンド派に傾倒する美貌の女性シャルロット・コルデーにより暗殺されてしまいます。
ダヴィッドはジャコバン派の一員であり、マラーの友人でした。ダヴィッドは彼への思いを込めて「マラーの死」(下の絵) を描きました。マラーは皮膚病の治療のために硫黄風呂に入っており、コルデーが持参した書類を手に持って読んでいる所を彼女に短刀で殺されました。この絵をみるとマラーはまるで殉教者のようです。
「マラーの死」ベルギー王室美術館蔵、当時プロパガンダ用に似たような複製画が何枚か作られました。
ジャコバン派ロベスピエールらは権力掌握のためプロパガンダの一環としてこの絵を利用します。「マラーの死」はジャコバン派による恐怖政治がもたらした混乱と恐怖の象徴として、フランス革命を舞台とするオペラ「アンドレア・シェニエ」で使われています。
典型的なのはこちら、ブレゲンツフェスティバル2011「アンドレア・シェニエ」の舞台装置。湖を浴槽に見立てています。頭部に布を巻き、コルデーの書類{書かれた内容も確かダヴィッドの絵と同じ)を手に持っている巨大なマラーがダヴィッドの絵の様に作られています。
最近ではROHの「アンドレア・シェニエ」2015。下はこの舞台のリハーサル風景ですが舞台中央にあるのは頭に布を巻いた頭部の像です。像のまわりにろうそくがおかれて死者を悼んでいるようです。 1:13くらいのところで見られる胸像。
更にこの彫像の土台部分をよく見ると、、、、何か書いて有ります。
“L’ami du peuple”の一部でしょう。これを訳すと「人民の友」。マラーがフランス革命の際発行した革命側の新聞の名前で、彼は民衆から「人民の友」と呼ばれていました。
「マラーの死」をイメージした舞台設定は主に第2幕で見ることができます。(2017.9.7.wrote)