オペラにより異なる歌い方

マノン・レスコー 

オポライスとカウフマンの歌を聴いていると、プッチーニのオペラでは音符の長さが自由自在に伸び縮みするのがよくわかる。歌い方・強度・速度は絶えずダイナミックに変化するし、歌い初めのタイミングの取り方も難しい。相手と合わせて歌うのも一苦労しそうです。

 

掲載した楽譜は第2幕、劇的なマノンとデ・グリュの二重唱場面(下の動画1:14から)。この短い10小節の楽譜の中に表現 (con calore, espressivo, con forza)、速さ(a tempo, rall)や強弱の変化を表す(デクレッシェンド)などの記号が詰め込まれています。

 

しかし彼らはこの様に複雑な楽譜を自然に流れるように歌っています。オーケストラは単に伴奏するだけでなく歌い手と同じ旋律を時には大音響で響かせます。そんなオーケストラの演奏の上を超えて聴衆に声を届けるためには高度な技術を必要とします。しかもこんなに難しい歌を歌いながら熱い迫真の演技をしているのですね。歌手とオーケストラによる激情の奔流と演技が相まって緊張感あふれる舞台が創り出されていきます。

 

マノン・レスコー/カウフマン、オポライス


 ついでながら比較として、

 

 セヴィリアの理髪師

フローレスがアルマヴィーヴァ伯爵の有名な大アリアを輝かしく歌っています。動画の中のヴォーカルスコアの場合一番上がアルマヴィーヴァ伯爵のパート。途中から入ってくる合唱は中段。下段はピアノ伴奏です。

 

掲載した楽譜は伯爵が歌う大アリアの中の盛り上がる部分なのですが、この部分に表現、速さ、強弱の変化記号はついていません。しかも歌のほとんどが16分音符。ロッシーニのアリアの場合、ずらーと並んでいるこまこました音符(楽譜をちょっと見るとおたまじゃくしがいっぱいで真っ黒に見える)を全体として均一にむらなくしかもものすごく速く歌うことが必要です。

 

しかしそれはすんごく難しく、フローレスの超絶技術があるからこそこんなに軽々と歌っているように見えるのです。また、途中から楽譜通りには歌っていないこともわかります。(注、この手のアリアの場合、歌い手に自由度があり楽譜通りに歌わなくても問題ない)


セヴィリアの理髪師/フローレス


 

同じ盛り上がる部分でもロッシーニとプッチーニで楽譜に書かれた楽譜の歌い方もオーケストラ(ピアノ譜ですけど)の演奏も随分違うのがわかります。

 

この2つの動画を見ると、一口にオペラといってもオペラ毎に(又は作曲家毎に)歌い方や使われる技術がかなり違うということがわかります。(2016.12 wrote)  おたく記事へ戻る