iltrovatoreによる主な公演の記録及び独断と偏見に満ちたコメント
1月
声帯血腫による4ヶ月あまりの完全休業からの復帰。 パリオペラ座の「ローエングリン」。 世界中のオペラファンが固唾をのんで見守っていた。 いくらか神経質でブレーキに足をかけての歌いぶりだったが、「カウフマンが(不死鳥の如く)灰からよみがえった」と絶賛された。もちろん全公演完売。
2月
ロンドンバービカンでワーグナーのコンサート、歌曲のリサイタルを行った。しかし途中で風邪から気管支炎になり残り2公演(一つは若い人との会話) はキャンセル。 ここでもカウフマンが完全に復帰しているかを確かめたい人々(専門家及びファン)で一杯のようだった。
MET今シーズンの最大のイベントとして、 「2017年大晦日から始まる『トスカ』全9公演にカウフマンが出演する」と大々的に発表された。 しかし発表直後カウフマンは全公演をキャンセルする。この時点で詳細は明らかにされなかった。
その後カウフマンのインタビューによれば、何回公演するかの取り決めが決着しないうちにMET側が 「全公演をカウフマンが出演する」 という趣旨の記事をカウフマンには知らせずに新聞に載せた。 そのためMETの公演を全て降りた、ということ。
ちなみにこの公演は、トスカ役オポライス、指揮者ネルソンズ、ネルソンズの代役のレヴァインも降板、ついにはスカルピア役ターフェルも降板してメインキャスト全員及び指揮者も全て交代するという珍しい公演になった。
3月
バイエルン歌劇場でハルテロスと共に 「アンドレア・シェニエ」 公演。 これも評判が良かった。 この辺でカウフマンが完全に復帰した感じ。 演出はへたくそな時代読み替えはないのがよかった。 しかし舞台を細かく分割しそれぞれの分割面で歌わない人々が別々の演技をしていたため、歌に集中したい聴衆に取ってわずらわしく迷惑であった。
5月
ウイーン歌劇場でのゲオルギューとの因縁の「トスカ」。 1回目の公演は無事に済んだが、2回目はゲオルギューが降板し 「星は光ぬ」のアンコールあり。 3回目はカウフマンもゲオルギューも降板。
6-7月
長年期待された「オテロ」をROHで歌い、その圧倒的な歌唱と演技力で 「我らが時代のオテロ歌い」 として認知された。 カウフマンはこれからもオテロを歌い続けることだろうが、その歌がどの様に進化してゆくかも興味のあるところ。 ちなみにこの公演もカウフマン出演分チケットは発売と同時に完売。
7月
バイエルンのオペラフェスティバルで「運命の力」「アンドレア・シェニエ」を歌う。 iltrovatoreはシェニエ公演しか行っていないが、いくつかのサイトやブログによれば「運命の力」の方が良かったという評判だった。
8月
オーストラリアにて演奏会方式の「パルジファル」公演。 カウフマンの調子は良かったらしい。
10月
パリオペラ座でのフランス語原典版「ドン・カルロス」公演がオペラ界の話題になる。 特にそのゴージャスな出演者も話題となる。 当然チケットは販売初日に完売。 ただし演出が時代読み替え。 ちなみにこのオペラを読み替えするのは相当に難しい。
実際演出家が一生懸命に自分のオリジナリティーを出そうとがんばっていたことは理解できたが、歌と台詞が演出と乖離していた部分、演出そのものが内部矛盾を起こしていると思われる箇所、単なる凡庸な思いつき演出もあった。
フランス語原典版の公演はオペラ史的にもヴェルディ研究にも重要であろうが、個人的には冗長な部分も多いと感じられた。ヴェルディが原典版の一部を削除及び改訂したのは単に長すぎるからという理由のみではなかったろうと思われる。
またこの演出でのドン・カルロスは人間的に全く魅力がない。 舞台が進むにつれ主人公が進化する役を得意とするカウフマンの魅力を引き出せない演出と感じられる。
カウフマンのドキュメンタリー “Jonas Kaufmann Tenor For the Ages” がBBCで放送される。
11−12月
中国ツアーでドイチュさんとリサイタル及びオペラコンサートを行う。 バイエルン歌劇場で再び 「アンドレア・シェニエ」 公演、及び 「O, Paradis」コンサート。 これらも評判がよかった。 またホセ・カレラスチャリティーガラでは大金を集めた模様。
と、6月から12月までは快調でほぼキャンセルなく歌ってきたカウフマンですが12月最後でこけました。 ローマでのGran Gala、モスクワでの大晦日のコンサートをキャンセル(延期)。
おっと忘れていました。今年は2つのアルバムを出しました。
マーラー作曲「大地の歌」。 普通2人で歌われますが、彼が一人で全部を歌っています。 そして「L'Opera」ではフランスオペラアリアを歌いました。 このアルバムはかなり好評。(2017.12.31. wrote)