ヨナス・カウフマンの2019年を振り返る

 

iltrovatoreによる公演の記録及び独断コメント

 

今年はオペラ公演22回、一幕だけなどのオペラコンサート形式 3回、リサイタル及びコンサート 13回。合計38公演。5-7月食べ物誤飲による喉トラブル及び風邪のためキャンセル多発 (11回)。

 

1月

 

★ コンサート:大地の歌 5回 

 

「大地の歌」は既にもう何回も歌っており、観衆も彼一人で歌う「大地の歌」に慣れています。好評でしたが、ハンブルク、 Elbphilharmonie, Großen Saal でハプニングが起こりました。

 

オーケストラの後部にいた一部の観衆が「声が聞こえない」と怒ったのです。演奏は中断を余儀なくされました。Elbphilharmonieは莫大な資金を投じてやっと完成したホールだけに、ハンブルクの人々はショックを受けていたようです。

 

しかしどんなによく考えられたホールでも、歌手の声は前にしか飛んで行きません。舞台後方席は勿論、舞台横席でも相当聞こえにくいです。そこがオーケストラ (楽器)演奏と異なるところです。

 

歌手が歌う場合にはホールの使い方を歌手用に変えるとか、後ろの席の聞こえにくさを聴衆に説明した上でチケット販売する等の配慮が必要かもしれません。

★ 1月7日にルッツさんとの再婚が発表されました。

 

★ オペラ:フィデリオ 4回 

 

キリル・ペトレンコが「フィデリオ」を初めて振るのが話題になった公演で、4回全て完売。カウフマンはフロレスタンを何回も歌っているが今回も好評でした。

 

既に9年使っている演出だそうですが、Calixto Bieitoによるこの演出の評判は良くないです。Anja Kampe、Günther Groissböck、Hannna-Elisabeth Müller等が共演。

 

2月

 

★ コンサート:フランス及びイタリアオペラから 4回 

 

すでにおなじみになった「L’Opéra ツアー」。前半2回はKate Aldrich、後半2回はAnita Rachvelishviliとの共演でした。このコンサートは人気があるらしく来年もフランスなどでやる予定になっています。4公演ほぼ全て完売。

 

3月

 

★ オペラ:運命の力 7回 

 

今年度のオペラ界最大の話題の一つとなったネトレプコxカウフマンのROH「運命の力」。カウフマンは7回出演しましたが、ネトレプコと共演したのは4回。

 

チケットは(二人以外のBチーム歌手達による公演を除き)一般販売前にほぼ売り切れました。更に某転売サイトで定価の10倍以上の値が付くという異常事態になり、非常識だと批判されました。

 

ネトレプコもカウフマンもうっかりキャンセルしようものなら凶暴化した聴衆に首を締められそうな雰囲気。人気歌手もつらいよ、でしたが、皆様無事に全回出演。

 

そして観客の膨らみに膨らんだ期待を裏切らない素晴らしい公演。評論は「途方もない幸運:傑出した初日公演」などとべた褒めでした。

 

カウフマン、ネトレプコ、テジエの3主役ともすばらしい出來。脇役の方々,フルラネットやコルベッリもハイレベルな歌と演技を披露してくれ、運良く公演を観賞出来たiltrovatoreも大満足でした。

★ カウフマンにとって4人目の男のお子さんが生まれました

 

4月

 

★ オペラ:カルメン 1回  

 

カウフマンが出演するのが一回だけの「カルメン」。評論家によれば、演出は「語る程の価値がない」そうで、カウフマンを始め、Clementine Margaine, Alexander Vinogradov達キャストが主役の公演だったようです。

5月

 

★ オペラ:「トスカ」全公演キャンセル   

 

★ ウイーン歌劇場創立記念ガラコンサートキャンセル

 

何かを喉につまらせ、喉を痛める。結局「トスカ」全公演キャンセルで、公演を観にパリへ出かけたiltrovatoreはがっくり。これで昨年始めからからのno cancellation (1年4ヶ月)は終わりました。残念。

 

6月

 

★ コンサート:Rolex Ambassadors Gala  

 

指揮:ドミンゴ、デュダメル、ソリスト:フローレス、カウフマン、ヨンチェヴァ、そしてユジャ・ワン

とくればチケットが発売開始2-3分で売り切れたのは当然でしょうか。男性のみならず女性歌手まで腕時計を付けて歌うとは、さすがRolexガラ。

 

さて、カウフマン。「運命の力」のアリアや「オテロ」の二重唱を聴く限り、好調とは言い難いように思いました。ただし「ユダヤの女」のアリアは素晴らしかったです。一流歌手は調子が悪いときでもそれなりに歌いますが、iltrovatore的には少々不安が残る公演でした。

 

 (2010.12.26 wrote)


7月 

 

★ オペラ:オテロ 1回  

 

★ バイエルン歌劇場からメダルを貰う この秋にハルテロスも貰った。

 

★  「オテロ」、「マイスタージンガー」公演キャンセル

 

ロレックスガラでは調子よいとは言い難いカウフマンでしたが「オテロ」では調子が戻った様に感じました。

 

カーテンコールでは彼の50才のお誕生日祝いにバイエルン歌劇場が “Happy birthday to you”を演奏。この歌劇場名物のドドドドッの足踏みと拍手。バッハラー総裁が進み出てカウフマンに「マイスタージンガー」メダルを渡し、彼のバイエルン歌劇場への貢献に感謝の意を表しました。

 

ですが次のオテロとマイスタージンガーはキャンセル。ああ、カウフマン・・・でした。

 

★ コンサート:Gala Evening、Regensburg  

 

アニタ・ラチヴェリシュヴィリさんと。

 

公演前に「カウフマンは風邪をひいているが歌います」とのアナウンスが入ったそうです。一応歌いきりましたが、録画を聴く限り余り調子が良いとは思えませんでした。う〜ん、まだ調子よくないなあ、という感じで不安が残りました。

 

8月 

 

★ オペラコンサート形式:アンドレア・シェニエ 3回  

 

オーストラリアでの公演。テジエ、ウエストブルックと共に。現地の評論に拠れば、調子は悪くなさそう。調子戻りましたか? 

 

この公演はオペラオーストラリア主催。日本でもこんな公演をやって欲しいです。新国立などが「日本のオペラ振興のために」とか言えば日本でもこの様な公演は可能かもしれません。ただ民間呼び屋さんによる営利目的のコンサートでこのレベルの歌手達を集めるのは無理かなあ。

 

9月

 

★ オペラ:オテロ 3回

 

既に8回歌っているので噂はあまり聞こえてこなかったです。しかし「便りのないのはよい便り」かな?

 

10月

 

★ コンサート:”Mein Wien” 1回 

 

CDの宣伝を兼ねてのコンサート、まずは本場ウイーンから。

 

ウイーン人からみるとミュンヘン生まれのカウフマンなど外国人扱いですが、ウイーン訛りを上手く歌いこなしていたらしく、複数の記事で、特に “ei” の発音の仕方を褒められていました。昔のウイーンの発音をうまく表現することができたらしいです。

 

来年は ”Mein Wien” をヨーロッパ各地で歌って廻ります。

 

★ 市長からメダルを受ける

 

CDでウイーンを宣伝してもらったということでしょうか。市長さんも嬉しそうでした。

 

★ OPUS KLASSIK2019でベストセラー賞を受賞

 

だが、”Mein Wien”のコンサートが重なったため贈呈式には出席出来ませんでした。

 

11-12月

 

★ オペラ:死の都 6回  

 

カウフマンとペーターゼンの歌唱、ペトレンコ指揮のオーケストラ、サイモン・ストーンの演出、すべてが絶賛された公演でした。 カウフマン絶好調。この公演は普通のオペラのレベルを越えています。絶品の歌唱と音楽を備えた素晴らしい舞台演劇、これぞ「総合芸術」に思えました。来年以降DVDになる可能性大。

 

だけれど、激しく動き回って演技しながら高音攻めの難曲をびっちり決める、なんていう荒技ができるソプラノ・テノールは世界にいったい何人いるのだろう。観客が満足できるレベルでこの演出を再演できるのでしょうか? 

 

追記

★ ウイーン歌劇場 大晦日の「こうもり」にサプライズゲスト出演

12月30日に発表されたゲスト出演。この歌劇場は歌劇場に来てくれた観客へのサプライズとしてぎりぎりまでゲストの名前を発表しないらしいです。とっくに完売の公演で、カウフマンが出演するしないはチケット売り上げに関係ないです。

 

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今年発売のCD、 DVD、その他  

 

★ CD、ヴォルフの「イタリア歌曲集」:Jonas Kaufmann, Diana Damrau, Helmut Deutsch (Live recording 2018) 

 

 

★ CD、Wien :ウイーンの歌とオペレッタから。

 

Jonas Kaufmann, Rachel Willis Sørensen, ウイーンフィル, 指揮 Ádám Fischer (Recording 2019)

Official German Classical Chartsで12回目のトップを取りました。12回というのはすごいです。

 

★ DVD、Jonas Kaufmann Opera Collection :カウフマンがチューリッヒにて若い頃歌ったオペラのコレクション。

パイジエッロ、Nina (2002) 

Cecilia Bartoli (Nina), Jonas Kaufmann (Lindoro / 羊飼い、ニーナの恋人) 他 指揮Ádám Fischer 

 

モンテヴェルディ、 ウリッセの帰還 (2002) 

Vesselina Kasarova (Penelope), Jonas Kaufmann (Telemaco)他 指揮 Klaus-Michael Grüber 

 

ベートーベン、フィデリオ (2004) 

Camilla Nylund (Leonore), Jonas Kaufmann (Florestan)他 指揮Nikolaus Harnoncourt

 

写真集その他

 

★ Jonas Kaufmann:過去の様々な舞台写真、私的な写真なども入っています。

 

★ Meet Your Master (ドイツのe-ラーニング システム)

カウフマンが歌(singing)、自分の声をどうやって知るか、どう訓練するか、レパートリー選択方法等々 を教えます。ただしドイツ語。

 

(2019.12.30 wrote) おたく記事に戻る