ヨナス・カウフマンの2021年を振り返る (今年もコロナ!)

 

iltrovatoreによる公演の記録及びコメント

 

ヨーロッパは夏場感染が収まったものの秋から冬にかけて再びコロナが大流行。歌劇場の閉鎖が相次いでいます。ヨーロッパ各国は3回めのワクチン接種、様々な規制、健康パスなどなどで今年の冬を乗り切ろうとしています。

 

今年のカウフマンのオペラ公演出演回数は演奏会方式、ストリーミングを含めて24回、リサイタル・コンサートはストリーミングを含めて21回でした。

 

1月

「リサイタル:Selige Stunde」 "Festibal Estrellas De la Opera" マドリッド、テアトロ・レアル (1.14)

 

2月

「ヴェルディ、アイーダ(新演出)」 パリオペラ座バスチーユ ストリーミングのみ (2.28)

出演:Sondra Radvanovski, Jonas Kaufmann, Ksenia Dudnikova, Ludovic Tézier, Dmitry Belosselskiy, 指揮:Michele Mariotti, 演出: Lotte De Beer: 

 

元々はガランチャがアムネリスをやる予定だったのですが降板してがっかり。カウフマンは「いつものように」良かったです。十八番の「清きアイーダ」も美しく大きく弧を描くレガートな歌いぶりが印象的でした。さらに、Radvanovskiのうまさには舌を巻きました。カウフマンも顔負けの感動的な素晴らしいピアニシモ。ただし演出が問題でした。大雑把な造りのパペットを共演させていたのですがその存在自体が単にうっとおしいとしか感じられなかった。演出家のアイデア倒れだと思います。


 

4月

「ワーグナー パルジファル(新演出)」 ウイーン歌劇場 無観客上演 ストリーミングのみ(4.18)

出演: Ludovic Tézier、Georg Zeppenfeld、Peter Kellner、Jonas Kaufmann、Wolfgang Koch、Elīna Garanča、指揮:Philippe Jordan、 演出:Kirill Serebrennikov

 

主役たち全員大変ハイレベルな演奏で、彼らの声が劇場全体に響き渡っているように感じられました。しかし演出は音楽とは全く異なるストーリーで展開されていました。あまりにも音楽と乖離していて、私的には現在までみた演出の中で最低の出来としかいえないです。ちなみに最近ウイーンでこの演出で再演されていますが (歌手ではなく演出の)評判はよくないようです。

 

5月

「ワーグナー、ワルキューレ第1幕(演奏会方式)」 ミュンヘン、バイエルン歌劇場 (5.13 & 5.16) 2回

出演:Jonas Kaufmann, Lise Davidsen, Georg Zeppenfeld, 指揮:Asher Fisch 

 

カウフマン好調。昨年より好調が続いていると感じられます。複数の評論家も同様のコメントを出していて笑える。強制的休暇の後なので調子がよいのではないかと勘ぐってしまう。そして、Lise Davidsenは大きい!


「歌曲リサイタル」 ウイーン、コンサートホール (5.20)

 

「ザルツブルグ聖霊降臨祭音楽祭フェスティバル、トスカ(演奏会方式)」 ザルツブルク (5.24)

出演:Anna Netrebko, Jonas Kaufmann, Luca Salsi, Cecilia Bartoli, 指揮:Zubin Mehta 

 

ハルテロスとターフェルが降板し、代わりにネトレプコとサルシが入りました。代役が豪華。またバルトリさんが羊飼いの子供役を歌うのもフィーチャーでした。


6月

「ワーグナー、トリスタンとイゾルデ(新演出)」 ミュンヘン、バイエルン州立歌劇場 (6.29~7.31) 5回

出演:Jonas Kaufmann, Anja Harteros, Wolfgang Koch, Okka von der Damerau、指揮 キリル・ペトレンコ、演出 クリストフ・ワリコフスキー

 

ぺトレンコが抑圧された情念を官能的に指揮していました。ハルテロスとカウフマンも上手い。二人の歌は内省的。抑圧された情念を滑らかに歌いました。演出も抑え気味で、この演出家にしては良い出来と思う。


 

7月

「リサイタル」 ウイーン、Teater im Park (7.11)

 

「プッチーニ、トスカ」 マドリード、テアトロ・レアル (7.19 & 7.22) 2回

出演: Jonas Kaufmann, Sandra Radvanovsky, Carlos Álvarez、指揮:Nicola Luisotti、演出:Paco Azorin

 

今回の「トスカ」ではラドヴァノフスキーが「歌に生き愛に生き」、カウフマンが「星は光ぬ」をそれぞれbisしました。2人の歌手が一つの公演でそれぞれbisしたのはTheatro Realでは初めてだそうです。もっとも「トスカ」でのカウフマンのbisで最も有名といえば、それはゲオルギューと共演した2016年ウイーン歌劇場での公演だと思いますけれど。


「プッチーニ、トスカ 演奏会方式」 スペイン、Peralada Festival Castell Peralada (7.25) 

出演:Jonas Kaufmann, Sandra Radvanovsky, Carlos Álvarez、指揮:Nicola Luisotti

 

「Extra festival concert: Der wendende Punkt」 ミュンヘン、バイエルン歌劇場 (7.30)

出演:Nikolausu Bachler, Ivor Bolton, Pavol Breslik, Constantinos Carydis, Asher Fisch, Christian Gerhaher, Anja Harteros, Ermonela Jaho, Anja Kampe, Jonas Kaufmann, Wolfgang Koch, Kent Nagano, Anna Netrebko, Anne Sofie von Otter, Marlis Petersen, Kirill Petrenko, Anne Schwanewilms, Nina Stemme, Bryn Terfel, Georg Zeppenfeld

 

在任中にバイエルン歌劇場を世界のトップ歌劇場の一つに仕立て上げたNikolaus Bachlerとのさよならコンサート。きら星の如く輝く最上級の歌手達が歌った豪華絢爛な素晴らしいコンサートでした。 後半に続く  (2021.12.25 wrote) おたく記事にもどる。


8月

「リサイタル」 ウイーン、Theatre im Park am Belvedere (8.3 & 8.9)

 

「Ljubljana Festival Concert オペラアリア」 Ljubljana, Congress Square (8.11)

 

「ガラ公演with Martina Serafin」 ヴェローナ、Arena Di Verona (8.17)

 

「プッチーニ、トスカ」 グラーツ、Schlossbergbühne, Kasematten (8.22, 24 & 25)

出演:Kristine Opolais, Jonas Kaufmann, Ludovic Tézier/Jordan Shanaha

 

スカルピアはブリン・ターフェルが予定されていましたが、体調が悪くキャンセル。代わりにLudovic TézierとJordan Shanahaが歌いました。


 

9月

「コンサート」 ギリシア、アテネ、ヘロディス・アッティコス音楽堂 (9.13)

 

このコンサートのあとカウフマンはバイエルン歌劇場主宰のOpera Fur Alle のコンサート、バイエルン歌劇場での「運命の力」3回もキャンセル。

 

10月 

「コンサート: An Evening with Jonas Kaufmann」 ヒューストン、The Wortham Theater Center (10.6)

 

「リサイタル」 (10.9~10.24) (6回)

ニューヨーク、カーネギーホール (10.9)

Ann Arbor, Hill Auditorium (10.12)

マイアミ、Adrienne Arsht Center(10.14)

ワシントン、Kennedy Center (10.17)

サンタモニカ (10.21)

カリフォルニア バークレー、Cal Performances (10.24)

 

久しぶりにUSAをツアーしてまわりました。評判はよかったです。「もっと我が国で歌って欲しい」、または「当然我が国でもっとたくさん歌って然るべきなのに彼は滅多に来ない」の如き不満感が漂うコメントもありました。


11月

「リサイタル"One Humanity Concert" 」 ジュネーブ、Human Rights Chamber at Palais des Nations.  (11.8)

 

この催しは、UNAOCがジュネーブの国連本部でオフィスを発足させる記念として開催されました。そしてカウフマンは「文明の同盟(Alliance of Civilizations: UNAOC)」のユネスコ大使になりました。


「ヴェルディ、オテロ」 ナポリ、Teatro di San Carlo (11.21~12.14) (7回)

出演: Jonas Kaufman, Maria Agresta, Igor Golovatenko

 

サン・カルロ劇場での「オテロ」は共和国大統領Sergio Mattarella、下院議長、知事、市長、文化界やビジネス界の豪華なゲストが参加して始まりました。劇場は満員、厳格なドレスコード適用。初めに国歌演奏あり。演出は現代に読みかえ。カウフマンその他の歌手たちの評判は上々。

 

「オテロ」公演後半、ユーシフ君がキャンセルしたオテロの代役として2回余分に歌いました。


 

12月

「クリスマス with ヨナス・カウフマン」 (12.12~12.22) (4回)

マンハイム、Rosengarten (12.12)

デュッセルドルフ、トーンハレ (12.18)

ハノーバー、Congresszentrum (12.20)

ウイーン、Wiener Konzerthaus (12.22)

 

コロナの再流行によりミュンヘンとロンドンの公演がキャンセルされました。


今年発売のCD, DVD

 

DVD/BL : コルンゴルト 「死の都」

Jonas Kaufmann (Paul), Marlis Petersen (Marie/Marietta), Andrzej Filonczyk (Frank), Jennifer Johnston (Brigitta) u. a.; Chor der Bayerischen Staatsoper, Bayerisches Staatsorchester, Conductor: Kirill Petrenko; Director: Simon Stone (Live Recording 2019)

 

CD/download: リスト "Freudvoll und leidvoll"

Jonas Kaufmann, Helmut Deutsch (Recording 2020)

 

CD/download: "It's Christman - Extended Version

Jonas Kaufmann, Stefanie Iranyi; Spielmusik Karl Edelmann; St. Florianer Sangerknaben, Bachchor Salzburg, Mozarteumorchester Salzburg, Berlin Music Ensemble; Cond.: Jochen Rieder - Till Brönner, Cologne Studio Big Band, Cond.: Wieland Reissmann

 

今年受賞した賞など

 

オーストリアのMusiktheaterpreises 2021、Special media awardが授与される (8月)

 

Opus Klassik, "Opera recording/music up to the 19th century”部門賞 を受賞。受賞対象は「ヴェルディ、オテロ」CD。(8月)

 

ドイツレコード批評家賞受賞。対象は「DIE TOTE STADT」DVD (10月)

 

Prest Music's 2021 Awards "The Award for DVD/BLu-ray of the Year" 対象は「DIE TOTE STADT」(12月)

 

「文明の同盟(Alliance of Civilizations: UNAOC)」のユネスコ大使になりました。(11月)

 

(2021.12.30 wrote) おたく記事にもどる