映画とオペラ 1: 「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(M:I-Rogue Nation) 2015年 〜「トゥーランドット」

 

「ミッション・インポッシブル」シリーズ第5作目。言わずと知れたトム・クルーズ主演のスパイアクション映画。

 

"オペラが挿入される場面はオーストリア首相の暗殺計画を阻止しようとイーサンがウイーン歌劇場に潜入するところ。劇場ではプッチーニの「トゥーランドット」を上演中。途中で謎の女性イルサも首相を狙っていることを知ります。"

 

オペラファンが楽しめるのはイルサが狙撃のタイミングを指定する楽譜を開いたところ。楽譜はこんな感じに見えていませんでしたか?(下の動画 3:59位)


 

すぐわかりますね。赤丸のところ。オペラ「トゥーランドット」第3幕、カラフの超有名なアリア「ネッスン・ドルマ」最後の高音、”Vin-ce-ro!”の最後の高音

 

ウイーン歌劇場舞台裏のはらはらどきどきアクションがオペラの壮大な音楽と平行して進んでゆきます。一方楽譜によって狙撃タイミングがわかってしまったオペラ通観客は「ネッスン・ドルマ」のその瞬間が来るまで、今か今かと待つことになります。なかなか憎い演出、良いアイデア。

 

しかもオペラの音楽に映画のシーンやアクションを上手く乗せているし、演出チームにはオペラをよく知っている人がいますね。

本物のウイーン歌劇場で、グレゴリー・クンデとリセ・リンドストロームという一流歌手を使い、アリアのみならずオペラ全体もなかなかのレベルで素晴らしかったです。映画そのものも楽しめました。

 

ちなみにローグネーションのワールドプレミア上映はウイーン歌劇場で行われました。同歌劇場で商業映画の上映が行われるのは劇場始まって以来初めてだったそうです。さらに付け加えれば、映画のシーンに出てきたウイーン歌劇場のあの広大な舞台裏をみたい、と期待に胸を膨らませて申し込んだウイーン歌劇場ガイドツアーは舞台裏を全く見せてくれなかったのでがっかり。

 

スパイアクション映画にオペラ場面が出てくるのはこれが初めてではありません。2008年公開のボンドシリーズ、「慰めの報酬」(Quantum of Solace)ではボンドがブレゲンツ湖上オペラでの「トスカ」公演に潜入してアクションを繰り広げる場面があります。しかしオペラの使い方は月並み、さらにオペラの演出自体もくさいのでiltrovatoreはローグネーションの方が好きです。(2018.9.24. wrote)