映画とオペラ 6:「アマデウス」 (Amadeus) 1984年 〜「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「後宮からの誘拐」その他

 

この映画はアカデミー賞8部門、ゴールデングローブ賞その他色々な賞を貰っています。トム・ハルスが演じる子供じみていて奔放、非常識の塊の様な天才モーツアルトもいいですが、サリエリを演じるF. マーリー・エイブラハムの演技がなんと言っても素晴らしい。

 

ただし歴史上実在したサルエリがモーツアルトを殺したとか、映画で描かれているような確執めいた関係があったという証拠はないと思います。

 

この映画はモーツアルトの音楽に溢れています。映画で使われる音楽もオペラで歌われるアリア等も聞いていて飽きないです。そのためかえってどこが良いとは言いにくいのですが、記憶に残ったのが「ドン・ジョバンニ」。

 

騎士団長が出てくるドン・ジョバンニ地獄落ちの二つの場面を比較すると面白いです。王侯貴族等向けの舞台は真っ当な正統派演出。一流の歌手達がもちろんイタリア語で歌っています。現在の我々が見ても結構楽しめそうです。

 

しかし、もう一つの演出は打って変わって、大衆用の劇場で上演された「ドン・ジョバンニ」のパロディー舞台です。歌は下手くそで下品なおふざけの連続ですが、大衆は大喜び。一般大衆が使っている言語で歌っているという設定でしょうか、英語で歌われています。

作曲家によっては「こんな風にオペラをわい雑下品に改変して、俺の芸術をこけにするのか!!」と怒り心頭になるかもしれませんが(W氏やB氏等は怒りそう)、モーツアルトならこの場面は納得できます。

 

なぜならモーツアルトはフランス革命の時代に生きた作曲家でしたから。「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」などを聞くにつけ、王族貴族階級に雇われて作曲していたモーツアルトであっても啓蒙思想の意義を理解し共感していたのだなあ、と思います。大衆向け「ドン・ジョバンニ」の下品なパロディーであっても、民衆の心を楽しませることのできる芸術の価値や意味を大切に考えていたのではないでしょうか。

 

天才と言われた彼ですが、自分が長年にわたり作曲に膨大な時間をかけ非常に努力してきたと手紙に書いていて、とても印象深いです (「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 2020年11月15日 (日) 02:48‎ )。

 

蛇足ですが、ドン・ジョバンニ地獄落ちの場面は「シャーロック・ホームズ:シャドウゲーム」 (Sherlock Holmes: A Game of Shadows) 2011年にも使われていまして、ジョバンニが地獄の業火に包まれるという場面とホテルが爆破されるという場面をシンクロさせています。ただしオペラは場面の付けたし位の意味しか無いです。ううむ残念。該当シーンのYoutube画像は消されてしまいました。

 

(2020.11.25 wrote)  おたく記事に戻る