「エカテリーナ・セメンチュク」(Ekaterina Semenchuk)

1976年ベラルーシ生まれ、現在48歳。プロではないが音楽好きの一家に生まれていて、家族の半数は医者だそうです(1)。サンクトペテルブルク音楽院で学びマリンスキーオペラでデビュー。以降ROH、テアトル・レアル・マドリッド、パリオペラ座、MET、ザルツブルクフェスティバルなど世界の様々な有名オペラ座に出演しています。

 

特にヴェルディ作品を歌うメゾソプラノとして人気があり、アズチェーナ (Il trovatore)、エボリ(ドン・カルロ)、アムネリス (アイーダ)などを歌っていますが、それ以外にもロシア、フランス、ヴェリズモ、そしてワーグナーと幅広いレバートリーを誇っています。


私は彼女のアズチェーナとアムネリスを舞台で観たことがあります。歌声は典型的なメゾという感じ。クリーミーで幅広く、低音高音ムラなく歌えます。それほど大柄な方ではありませんが歌芝居ともうまいです。以前来日してアムネリスを歌った時、カーテンコールでキャピキャピと楽しそうに歓声に答えていたのが記憶に残っています。

 

彼女は役を歌う準備として、

「まず楽譜を、読む、ことから始めます。楽譜には全てのことが書かれており、それを学ぶのは楽しいです。」

「そして台本、言葉などを理解したあと、台本に書かれているリズムで喋ってみます。リズムのパターン、休止、単語をきっちりと学ばなければなりません。そして全てのフレーズを何回も何回も繰り返すのです。」

「これは苦労の多い仕事ですが非常に重要なことです」、と語っていて、一流歌手に共通ですが、やっぱり研究熱心で努力家のように見えます(2)。

 

彼女の特徴は非常に広い音域を持っている(少なくとも低いAからハイD♭)(2)ということで、そのせいもあるのか(?)、かなり以前からソプラノのドラマティックな役、マクベス夫人(マクベス)、リーザ(スペードの女王)、アビゲイル(ナブッコ)などを歌っています。

 

そして昨年はソプラノにとってさえ難しいトゥーランドットを歌いました。下の動画はトゥーランドットを歌っている彼女ですが、強力な高音で非常にドラマチックに歌っています。

Teatro San Carlo 2023


彼女はインタビューで、

「実は何年か前、イル・トロバトーレで共演していたマリア・アグレスタに『あなたは素敵なトゥーランドットになるわよ』と言われ、その時は『そんなのはキチガイ沙汰だ』と返事をしたけれど、結局歌うことになりました。」と語っています(1)。

 

彼女の情報はネット上にはあまり出回っていないので、プライベートなことはよくわかりませんが、乗馬が好きなようで、「もし歌手になっていなかったら医者になってもっと乗馬に熱中していただろう」と言っています(3)。

 

1. Entrevista amb la mezzosoprano Ekaterina Semenchuk  

2. Q & A: Mezzo Ekaterina Semenchuk On Her Passion For Verdi & Her Vast Repertory By Mauricio Villa Operawire 2019.10.25  

3. Talking with Singers:Ekaterina Semechuk by Jenna Simeonov 2016.11.23

 

(2024.05.07 wrote)番外地に戻る