「ヘルムート・ドイチェ」(Helmut Deutsch):ピアノ伴奏者


ウイーン生まれのピアニスト兼伴奏者。1945年生まれ。長らくHochschule für Musik und Theater München (ミュンヘン音楽・演劇大学:ドイツで最もランクの高い音楽大学の一つ)で歌曲担当教授をしていました。

 

ピアノ伴奏者として非常に有名で、ヘルマン・プライとは12年以上共演しています。その他にも、Barbara Bonney, Grace Bumbry, Ileana Cortubas, Brigitte Fassbaender, Hans Hotterなど超有名歌手達の伴奏をしています。

 

現在でもDiana Damrau, Michael Volle、Anne Sofie von Otter、Piotr Beczała、そしてとりわけ大学教授時代の生徒だったJonas Kaufmann 等の伴奏者として現在でも精力的に公演を続けていらっしゃり、数多くの録音があります。

 

また2018年よりヘルムート・ドイチェの名前を冠した国際歌曲コンクールがウイーンのシェーンブルン宮殿で開催されています。 

 

彼の名声は高く、単に歌う為の伴奏と言うよりむしろ歌手と共に音楽を創り上げる極めて優れた才能によって高い評価を得ています。

 

とはいえ彼の演奏はとても自然ででしゃばることなく、私などちょっと聞いても格段に優れている感じはしないのですが、別の伴奏者の演奏を聞くと「ああ、やっぱりドイチェさんはうまいのだ」としみじみ感じ入ることがあります。

 

ドイチェさんの奥さんは鮫島由美子さん、日本人で有名な歌手でした。段ボール3箱分の手紙のやりとりを経て結婚に至ったというエピソードが昔の「徹子の部屋」で紹介されたそうです。(追記;現在は離婚されておられる?ようで、彼女のエッセイには"元"夫と記されております。)

 

そういえば・・・ドイチュさんと鮫島さんの縁があったからでしょうか、昔々武蔵野でそのころは全く無名のヨナス・カウフマンと鮫島由美子のリサイタルがあったそうです。ただし「その時のカウフマンの評価は散々」だったそうですが(武蔵野文化事業団ブログ 削除されました)。

 

ドイチェさんはOpera Onlineによるインタビューで「歌手と伴奏者の関係」について語っています(上に出してある動画)。彼の伴奏者としての考え方がよく現れていて、

 

「我々(伴奏者)は歌手をリードする。だが歌手の息継ぎのためにもっと時間をかけることが必要だ、または息がなくなるのでもっと早く進めよう、など歌手の状態を感じ取る必要がある。」「歌手と伴奏者の関係はとてもデリケート。歌手は何時も機嫌が良いわけでもなし、とにかく声帯を大切にしなければいけないから。僕らは優れた兄であり彼らの担当医でなければならない。」「歌手と私の曲の解釈が違う場合、最終的には歌手のやりたい様に伴奏する。」

 

ナドナド歌曲の伴奏に関する様々な含蓄のある発言をなさっておられます。ドイチェさんは英語でゆっくり喋っておられますし自動生成の英語字幕もつけられますので興味のある方はお聞きください。(2021.02.19 wrote) 番外地に戻る