「リゼット・オロペーサ」(Lisette Oropesa)

Teatro Real 2018 ランメルムールのルチア 「狂乱の場」。 技術も歌唱力も抜群。


私が彼女に目を止めたのは彼女がMETでヨナス・カウフマンと「ウェルテル」で共演した時。シャルロットの妹ソフィー役でしたが、歌声は澄んで明るくその上スタイル良く美しい顔立ちがとても印象的でした。

 

彼女はルイジアナ州ニューオーリンズで1983年に生まれています。御両親はキューバからの移民でした (1)。彼女のお母さんが歌手で音楽に囲まれた環境に育ち、若い頃は専らフルートを吹いていたそうですが、大学の時歌にしようと決めました (2)。

 

彼女はMET National Councill Auditions 2005のGrand Finalsで優勝。2007年にMET 「フィガロの結婚」でスザンナ役のカバーをしていたところ、最終リハーサルの1日前に代役を告げられ本番で歌ってブレークしました (2)。

 

以降、グルックやヘンデル等バロックオペラ、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ等ベルカントオペラ、ヴェルディやプッチーニなどのイタリアオペラ、モーツアルトやワーグナー等のドイツオペラ、そしてマスネ、ビゼー、マイアベーアなどのフランスオペラと、幅広いレパートリーを歌っています。

 

彼女はキューバオリジンなので、英語とスペイン語のバイリンガル。しかもルイジアナ出身なのでフランス語にも堪能でイタリア語は楽だそうです (2)、、、、歌手としてはものすごく有利ですね。蛇足ながら彼女はスペイン国籍も持っているそうです(1)。

 

彼女はリリックなコロラトゥーラ歌手です。私は彼女の「ランムルメールのルチア」のルチアや「リゴレット」のジルダなどを録音で聞きましたが、彼女は難度の高いコロラトゥーラをむら無くなめらかに軽々とこなします。しかも叙情に満ちた素晴らしい歌唱で圧倒されました。ベルカントオペラのテクニックを完全にマスターしておられますね。恐ろしく上手いです。

 

彼女で特筆すべきことといえばRunning。彼女は熱心なランナーでありマラソン選手です。彼女の語るところによれば、「私は若い頃ものすごく太っていたのでエクササイズを始め、最終的に80パウンド(約36kg) 減らしました。その結果体がコントロールできるようになって気分が良かったの。マラソンを初めたのはその後で、Runningは諦めないこと、そして自分が何者かを教えてくれた」 そうです(3)。

 

オペラ歌手はある意味アスリートと同じで、歌うのにも演技するのにも多くのエネルギーを必要とします。フルマラソンを走りきれる体力は舞台で大いに役立っているのでしょう。

 

インタビューで語る彼女はフランクで、明るくて、めちゃめちゃ早口で、そして喋りまくります。カウフマンも喋りだしたら止まらないタイプのように見えますが、彼女のほうが更に上をいっている感じがします。

 

今年の秋には来日して、ルカ・サルシ (この方も良いですよ) といろいろなオペラアリアや二重唱を歌ってくれるそうなのでとても期待しています。

 

(1) Lisette Oropesa from Wikipedia. This page was last edited on 16 June 2022 at 22:34 (UTC) 

(2) Classic Talk with Bing & Dennis:  Lisette Oropeza Part 1

(3) Classic Talk with Bing & Dennis:  Lisette Oropeza Part 2  

 

(2022.07.27 wrote)  番外地に戻る