ワルトラウト・マイヤー (Waltraud Meier)

ワルトラウト・マイヤー。希代のメゾソプラノ歌手にしてソプラノ役も歌います。クンドリ、オルトルート、ヴェーヌス等のメゾ役、イゾルデ、ジークリンデ等のソプラノ役等、およびワーグナー以外にも種々のイタリア・フランスオペラ、例えばアムネリス、カルメン、エボリ公女、サントゥッツア役でも有名。

 

バイエルンとウイーンの宮廷歌手の称号を授与されているのみならず、フランス政府より芸術文化勲章(コマンドゥール)を受勲していらっしゃいます。カウフマンも同じ芸術文化勲章(シュヴァリエ)を受勲していますが、ワルトラウト・マイヤーの勲章はコマンドゥール,オフィシエ,シュヴァリエと3階級あるこの勲章の最高位です。

 

「コマンドゥールとオフィシエについては、以前の等級を授与されてから少なくとも5年を経て新たな叙勲に値する功績を示した者にのみ授与される」 そうですからカウフマン(2011年受勲)もいずれ更に高位の勲章を受勲されるかもしれませんね。(追記:カウフマンは2018年にオフィシエを授与されました。)

 

彼女はドイツ生まれ。現在61才で、最近はエレクトラのクリテムネストラを演じており2015-2016のMET HDで観ることができます。充実した豊かな中低音と響き渡る高音。ドラマチックな声ですが決して重くない。役に対する深い理解があり、役になりきっての演技も歌唱力も超一級。しかも姿形が麗しい。オペラ歌手に要求される全ての要素を持っていらっしゃる御方です。

 

私が好きなのは彼女のサントゥッア。歌と芝居が迫真的。現在までにこれ以上のサントゥツアを聞いたことはないです。(こちら)。

 

しかし彼女が最も有名なのはワーグナーの作品でしょう。クンドリが超有名ですが、その他にも「トリスタンとイゾルデ」のイゾルデ。

第3幕最終場、息絶えた恋人トリスタンに視線を注ぎながら歌う「愛の死」(Liebestod) は陶酔感に満ちた濃密で官能的なアリア。聴いているこちらの心の奥に隠された情念までもがあぶり出される。


 

そして「ワレキューレのジークリンデなどです。

 

ワルトラウト・マイヤーは2017年10月、新国立劇場での「神々の黄昏」にヴァルトラウテ役で出演なさいます。新国立のページに彼女のインタビュー記事が載っていましたのでご覧下さい。とても良い内容です。日本語です。

 

彼女はまだまだいい声なのですが、歳には勝てず次第に有名な役どころを終わりにしています。

 

クンドリとイゾルデの最終舞台を務める彼女を映した「ワーグナーのリジェンド ー ワルトラウト・マイヤー、さようならクンドリ、さようならイゾルデ」と名付けられたドキュメンタリー(ドイツ語)があります。

 

さらにおまけですが、彼女に興味の有る方はドキュメンタリー“Waltraud Meier: I follow a voice within me” (2008) をご覧下さい。長いですがマイヤーをより理解できます。(英語字幕付き)。(Youtubeで視聴可能です)

このインタビューではいくつも心に残ることをおっしゃっていますが、その一つ

「歌は80%がテクニック、10%が響きと良い声で天性のもの、10%は個性すなわちテクニックをきちんと使うための想像力と才能、最後の1%はspark(ひらめき、才気)ね。」(2017.9.16. wrote)

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