ロレックス・アンバサダー・ガラ、ミラノ、スカラ座 2019.6.23.公演

指揮:デュダメル、ドミンゴ。 ピアノ:ユジャ・ワン。 歌手:フローレス、カウフマン、ヨンチェバ。 と来てチケットが売れないわけがない。発売後瞬時に完売したロレックス・アンバッサダー・ガラコンサートがミラノ・スカラ座で開催されました。

 

ヨナス・カウフマンはちょっと前に喉の故障でパリオペラ座「トスカ」を全キャンセルしたためどうするのかなあ、と心配しましたが無事に出演しました。

 

演目のみで歌手の名前はでていないプログラムでしたが、その演目をみれば誰が何を歌うかはっきり分かります。カウフマン・フローレスそれぞれの得意分野からきっちり同数ずつ歌ってくれました。

 

まずはデュダメルによる「運命の力」序曲。今年3月ROHでのネトレプコとカウフマンによる「運命の力」が思い出されます。あれはため息が出るほど素晴らしかった・・・。

 

次はユジャ・ワン。何時もの様にド派手ピチピチ超ミニの服に金色のハ〜イヒール。始めはシューマンのピアノコンチェルト。次がビゼー作曲ホロヴィッツ編曲の「カルメンの主題による変奏曲」。

 

これがめちゃくちゃ難しい超絶技巧曲で、指がまるでアクロバットしているように動く。あんな超難しい曲を演奏しながら、あのハイヒールでペダルをよく踏めるなあ。と変なところで感嘆していました。

 

次に歌手達。歌う順番は無視して、まずフローレスから。

 

彼は「ロメオとジュリエット」から「太陽よ、昇れ!」、ヨンチェバとの「婚礼の夜の二重唱」、そして「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」を歌いました。

 

彼は極上の技術を持ち歌い方も素晴らしく上手いです。最近はウェルテルなどのフランス物、ヴェルディの「椿姫」アルフレードも歌っており新たなレパートリーを開拓しているようです。しかしこれらのアリアを歌う他の歌手と比べると現在の彼の声は未だ細め固めに思え、私は複雑な気分です。

 

彼は100年に一人と言われる稀代のロッシーニ・テノールなのですから、歌の半分はロッシーニにして欲しいと願うiltrovatoreです。

 

ヨンチェバはクリーム色のゆったりとしたドレスで登場。「ロミオとジュリエット」からの二重唱をフローレスと、「オテロ」第1幕「愛の二重唱」をカウフマンと、そして「トスカ」から「歌に生き愛に生き」を歌いました。

 

彼女の声は以前より深みと密度が増しているのではなかろうか?無事にご出産遊ばして再び元気なお声を聞かせて頂きたいと願うばかりです。

 

さてカウフマンです。最初は「運命の力」から「人生は不幸な者にとって地獄だ」。この3月に聴いたばかりのアリアです。彼の「いつも」と比べたらまあ「こんなもん」でしょう。ただし一般的にいえばそりゃダントツにものすごく上手いです。しかしオペラの中で聴いた方がずっとemotionalだった・・・ (当然か)。

 

次は「オテロ」の二重唱でした。これも「彼のスタンダードレベル程度」に上手かった。彼は来月バイエルンでハルテロス、フィンリーとともに「オテロ」を歌う予定です。極上メンバーがそろって歌うのですからキャンセルしないで下さいね。

 

そして最後はアレビ作曲「ユダヤの女」で「ラシェルよ、主の恵みにより」。これはすごかったです。主(神)と愛する娘の間で懊悩するエレアザルの思いを彼独特の深い声で切々と歌い上げました。少しの瑕疵もなく完璧。

 

最後は3人それぞれがアンコール。まずフローレスがギターを持って出てきます(今年の来日公演でもきっとやるに違いない)。 そして「きれいな歌だよ」と言ってメキシコの歌 ”Cucurrucucú paloma”を歌いました。カメラはその歌にじっと聞き入るドミンゴ (メキシコ育ち) を映し出します。

 

裏声を長〜〜〜く伸ばして観客の視線を一身に集め、その後ちょっと眉を上げて笑いを取るなどエンターテーナーとしての面目躍如でした。

 

次はカウフマンでカールマンのオペレッタ、「伯爵令嬢マリツァ」から "Wenn es Abend wird - Grüß mir mein Wien"。来年一月からのコンサートツアーと、これから出すCDの中で歌われる曲でしょうか。

 

最後はヨンチェバでシャルル・ルコック作曲「 百人の乙女」から"Ô Paris, gai séjour de plaisir"。彼女はこの曲をパリオペラ座創立350年記念ガラ公演でも歌っていましたね。

 

しかしまあ歌手3人ともしっかりと腕時計をしていらっしゃる。女性が腕時計をして歌うコンサートはあまり無いでしょう。

 

最後は「椿姫」から「乾杯の歌」。アルフレードとしては少々軽め細めと少々重めの声をしたテノール達でした。すっかり書くのを忘れていましたが、歌手の指揮はドミンゴ様でした。う〜ん、彼の指揮は時に微妙。

 

medici.tv 

「ロレックスガラ」2019.6.24.より一年間無料放送。このサイトに入り、ロレックスガラ(REPLAY)をクリックし、(登録:CREAT A GUEST ACCOUT)、log inすれば見ることが出来ます。

 

(2019.06.27. wrote)

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