MET at-Home Gala 2020.4.25

コロナの感染拡大により世界の歌劇場が閉鎖に追い込まれています。歌手、オーケストラの皆さんも仕事がなくなって大変ですが、歌劇場も大変です。特にMETはヨーロッパの歌劇場と異なり政府の補助がほとんどないので、経済危機はより深刻です。

日本でのシネマ上映などでお世話になっているMETですのでiltrovatoreももちろん寄付します。

 

今回のGALAは世界の歌劇場で活躍するスター達を40人近く集め、彼らの自宅から歌をお届けするという趣向です。全部で4時間。これはワーグナーか?いやワーグナーの楽劇でも途中休憩があるでしょ。今回は休憩なしで疲れました。

 

で、記憶に残った事柄をTwitter風に書いてみます。記憶違いや綴り間違いがありましたらごめんなさい。なお歌手や演目の綴りの特殊文字は一切省いていますので、ご容赦ください。

 

Peter Mattei:ドン・ジョバンニより “Deh vieni alla finestra”

ご自宅の窓から湖が見える。素晴らしいロケーション。伴奏はアコーディオン。その手があったか。

 

Aleksandra Kurzak and Roberto Alagna: 愛の妙薬より二重唱

Alagnaという方は演技に異常な才能があり観客を楽しませるのがうまいです。居間で歌ってもオペラになっている。そもそも共演した「愛の妙薬」が縁でお二人は結婚なさったのですよね。って。Kurzakもそう言ってますけど。

 

Renee Fleming: ヴェルディのオテロより ”Ave Maria”

お久しぶりのルネ様。今もお元気です。

 

オーケストラのメンバーによる「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲」「ローエングリン第3幕への前奏曲」

いや〜、全員を合わせてずれのないようにするのは大変だったでしょうね。綺麗でした。

 

Joyce Didonato: ヘンデルのセルセより “Ombra mai fu”

この歌は難しい高音などは一つもなく、しかしその単純さゆえに歌うのが非常に難しい曲です。ひたすら、ひたすら美しかった。感動しました。

 

Jonas Kaufmann: アレヴィのユダヤの女より “Rachel, quand du Seigneur”

カウフマンのおしゃべり。

「僕の先生、ミカエル・ローズさんはブルックリンから来たのです。彼のピアノの上には ”Don’t forget the MET” 「メットを忘れるな」 とかいたノートパッドが置いてあって、技術的なアドバイスがあるときはそのパッドに書いて楽譜に貼り付けていたのですよ」

 

「ユダヤの女」は将来カウフマンに歌っていただきたい演目で、今回も楽しませていただきました。

 

Ambrogio Maestri and Marco Armiliato: アンドレア・シェニエより ”Nemico della patria”

以前、カウフマン、ハルテロスの「アンドレア・シェニエ」をミュンヘンに見に行った時、ジェラード役が急遽交代。ルカ・サルシからマエストリ氏に代わっていました。何せ巨体。カツラが頭の上にちょこんと乗っかり、狭いユニットに閉じ込められ身動きできない状態で歌っていたのを思い出します。

 

Erin Morley: 連隊の娘より “Chacum le sait”

ピアノの伴奏をしながら(結構難しいですよ、この伴奏)コロラトューラを余裕で転がしてます。すごい!さらに声も綺麗なのですねえ。

 

Jamie Barton: ドン・カルロより ” O don fatale”

声量がすごくて伴奏のピアノが小さくしか聞こえない。そういえば、今回彼女より先にMichael Fabianoが オネーギンより “Kuda, Kuda” を歌っていました。

 

それで思い出しましたが、ジェイミー・バートン、マイケル・ファビアーノ、アンジェラ・ミードは昔「オーディション」(METによるナショナル・カウンシル・オーディションの舞台裏を追ったドキュメンタリー映画 2007)に出演していました。

 

あの時世界のオペラ界を夢見てオーディションを受けていた3人が今METの立役者になっています。

 

Rene Pape: 魔笛より “In diesen heil’gen Halle”

相変わらず彼の横にパーぺ・ダックがいる。彼の歌う声もいいですが、喋る声も深い低音が響いて魅力的なのですよ。

 

David Chan and Yannick Nezet-Seguin: タイスより、タイスの瞑想曲

これはあまりにも美しい。記憶も定かではないけれど、「タイス」の舞台で、この曲の演奏が静かに終わる時、舞台の台(or ベッドか?)に飾ってあったたくさんの赤い花が一斉に落ちる演出があり、ひどく印象に残っています。

 

Joseph Calleja: グノーのロメオとジュリエット “Ah! leve-toi, soleil!”

カレヤもだんだんおじさんになってきましたね。

 

Golda Schultz: プッチーニのつばめより “Chi il bel sogno di Doretta”

ミュンヘンの「トゥーランドット」 でリューを歌っていたのを聞きました。その時の主役のシュテンメも素晴らしかったけれど、彼女の歌声が美しかった。今回も高音が素晴らしい。本当に夢見るドレッタですね。

 

Anthony Roth Costanzo: ヘンデルのAmadigi di Gaulaより“Pena tiranna”

このカウンターテノールの声はいいですね。評判になっていたけれど初めて聞きました。

 

Sonya Yoncheva: ルサルカより 「月に寄せる歌」

このアリアは深い森の中にある暗い湖を感じさせる。ヨンチェヴァの少々暗めの声がぴったり。

 

MET合唱団とオーケストラ: ナブッコより 合唱 “Va, pensiero”

「ゆけ、我が思いよ、黄金の翼に乗って、、、、美しい我が祖国、失った我が祖国、愛しく、不運な思い出よ、、、、、我胸中にある記憶を、過ぎ去った日々を語っておくれ」

 

不覚にも涙が出そうになりました。歌の最後、オーケストラも消え、合唱の声の響きだけが空間に漂う、その一瞬が大好きです。

 

Gunther Groissbock: R.シュトラウスの無口な女より “Wie schon ist doch die Musik”

彼のF Bを見ていれば、ピアノがとても上手なことはすぐわかります。今回もピアノの弾き歌い。でもまあ、超低音がよく出ること。惚れますわ。

 

Lisette Oropesa:マイアベーアの悪魔のロベルトより ”En vain j’espere“

この人の声は(顔も)綺麗で、そしてうまいのですよね。楽々と歌います。この方の使っているマイクが良いのか、いい音響ですね。

 

Stephen Costello and Yoon Kwon Costello: ファウストより “Salut! demoeure chaste et pure“

ハイハイ、最後のハイCしっかりと出しておられました。このハイCは絶対出さなくちゃいけないけれど、難しいのですよね。彼も中年になったなあ、と感慨深い。

 

最後はAnna Netrebkoでした。

が、うまくライブができなくて以前録音したラフマニノフの歌曲(Op.4 No.4) になりました。ちょっと残念。

(2020.4.26 wrote) 鑑賞記に戻る