注:「鑑賞記」のページに入れましたが、今回もこのリサイタルを聴きながらの単なる呟きです。
今回は導入部分の映像にMET Stars Live in Concertに出演する歌手たちのオペラ舞台がちょっとずつ入っており、なかなかよろしいです。ゲルブさんによると、今回は野外ステージなので歌手は集音マイクをつけています、と言うこと。実際後ろで演奏する弦楽器にもマイクがついていました。
いや〜、夕暮れの地中海の風景がなんともロマンチックで美しい。コンサートが進むに連れてだんだんと暗くなってゆくのも効果抜群です。
今回はウイーンの弦楽クインテッドが演奏しています。ピアノ伴奏より実際のオペラに近い感じがします。今回の演奏を聴いていると「早く実際のオペラを見たい!」気にさせられます。
「愛の二重唱」 From プッチーニの「蝶々夫人」
ピンカートンはテノールに好まれない役です。金を使って女を現地妻にするやり方が現代のテノールたちには抵抗があるのでしょう。しかしアラーニャはピンカートンの中に共感できる部分を探して歌っている、と昔語っていました。
彼らの二重唱はMETでのミンゲルによる幻想的な舞台を思い起こさせます。アラーニャもうまいけれどクルザックもうら若い女性の一途な恋心を美しいピアニッシモで表現していて素晴らしい。
「太陽よ、昇れ」 From グノーの「ロメオとジュリエット」
アラーニャが若い頃に歌ったROHでの「ロメオとジュリエット」をDVDで聴いたことがあります。伸びやかで明るくちょっとむきになったような彼の歌声はロメオにぴったりでした。現在の彼は57歳でお孫さんもいらっしゃいます。しかし今でも南欧風の明るい声は変わりませんね。ただずっと落ち着いた感じに聞こえました。観客もいないコンサートだからかもしれませんが。
「今の歌声」 From ロッシーニの「セヴィリアの理髪師」
ロジーナは普通メゾソプラノが歌いますけれどソプラノも歌うことがあります。クルザックは元々コロラトゥーラが得意です。今回もその特性を生かしてアジリタの部分にバリエーションをつけて自由に遊んでいる感じで歌っていました。これだけ楽々と歌える(ように見える)なんて、いいなあ。
「愛しき妙薬」 From ドニゼッティの「愛の妙薬」
4月のMET At Home Galaで、この二人によるこの二重唱はすごく人気だったらしいです。コロナ流行で歌劇場はみんな閉じてしまい、みなさん落ち込んでいる時にこの能天気な明るい二重唱は私たちの心まで明るくしてくれました。ネモリーノはまさにアラーニャにはぴったりのはまり役。これこそ舞台で見たいのですけどね。
「やがてくる自由の日」 From プッチーニの「西部の娘」
彼がこの歌を歌うのを初めて聞きました。まだ舞台では歌っていないはずです。
アラーニャは基本リリコテノール、と私は思うのですがヴェリズモオペラの重い役(例えば道化師のカニオ)もやります。どう考えても声がドラマティックテノール役には合わないと思うのです。しかも彼は声をとても重く作るなんてしていません。彼の声で彼流に歌います。
でも実際に舞台で歌われるとなぜか納得してしまう。不思議な人です。でもさすがこのアリアは彼には少々重すぎるかなあ。レガートさがイマイチと感じます。
「サントゥッツァとトゥリッドの二重唱」 From マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」
アラーニャはトゥリッドを既に何回も歌っています。もうすっかり慣れて、歌も芝居もこなれている感じ。うまいです。
サントゥッツァは本来メゾソプラノの役です。やはり彼女が歌うには少し無理があるかなあ、中低音域の響き・迫力に欠けているような気がします。でも美しく歌っていますね。しかしこの二重唱はフルオーケストラ付きでないとつまらないです。
ここで昔二人が共演したMET「カルメン」の舞台映像が出ました。アラーニャがドン・ホセ、クルザックがミカエラです。
「アヴェ・マリア」 From ヴェルディの「オテロ」
このアリアは技術的にと言うより歌唱的に歌うのが難しい曲です。死を予感するデズデモナの祈り。クルザックのピアニッシモは美しくはかなく、とても印象的で美しかったです。
「既に夜は更けた」 From ヴェルディの「オテロ」
「オテロ」第1幕終わりの有名な愛の二重唱。この歌を歌う頃、あたりはすっかり暗くなってきました。オテロとデズデモナは夜更けに星空を眺め互いの愛を歌います。カメラも二重唱と共に暮れゆく空を眺めます。
「閉ざした唇に(メリーウイドウ・ワルツ)」 Fromレハールの「メリー・ウイドウ」
あんれ?フランス語で歌ってないですか?まあオペレッタだから自分の好きな言語で歌っても構わないのだけれど。
「シエリト・リンド」 Quirino Mendoza y Cortés(キリノ・メンドーサ・イ・コルテス)作曲
メキシコで古くから親しまれている愛の歌。
歌詞の中の「アイ、アイ、アイ、アイ、歌って、泣かないで」 ”¡Ay! ¡ay! ¡ay! ¡ay!, ¡canta y no llores!” と歌う部分は私にはなぜか「愛、愛、愛、愛、乾杯の夜」と聞こえてしまう。
「フニクラ、フニクラ」 ルイージ・デンツア作曲
イタリア ベスビオス火山に設置されたケーブルカーの宣伝のために作られた曲らしい。
昔「みんなの歌」で放送されていたかしらん?あれ、年がバレる。
人気ではアラーニャの影に隠れているがクルザックも歌唱技術・歌唱力・演技に優れたソプラノです。彼女は結婚する前から世界のトップ歌劇場で歌っている実力派です。
(2020.8.17 wrote) 鑑賞記に戻る