鑑賞記:「マクベス」東京・春・音楽祭  東京文化会館 2021.4.19 ストリーミング

 

楽しみにしていたメーリが来なくなったので正直ガッカリしていました。が、

 

予想以上によかったです(申し訳ありません)。ストリーミングなので音の響きや深さを測ることは難しいですが、それでもオーケストラや合唱が頑張っているのはわかりました。弦ばかりでなく金管も表情豊かで音楽全体にメリハリがついていました。魔女たちの合唱もおどろおどろしくてよかったです。

 

ムーティー様の指導のおかげでしょうか。ムーティー様がこのように東京・春・音楽祭に入れ込んで下さるのはとても幸運で嬉しいことと感謝しています。来年もお願いします。

 

ソプラノのアナスタシア・バルトリさん。美人。オペラ歌手としては痩せている方です。鋭く、強く、良く通る声で相当高度な技術を持っていらっしゃる。マクベス夫人の強く張る高音から低音までムラなくこなしていました。難をいえば中低音の充実度が少し不足しているようにも思いましたが、これはネトレプコの「ど迫力マクベス夫人」の見過ぎ・聞き過ぎでそのように感じるのかもしれません。

 

しかし、そのような不足を感じたのは第1幕だけで、あとは十分満足できる素晴らしいマクベス夫人でした。いやあ、高音が素晴らしいです。新国立などで歌っていただきたいです。

 

マクベス役のルカ・ミケレッティ。この方もよかったです。第1幕のマクベスはどちらかと言うと自信がなく夫人に振り回される感じで、中盤から後半にかけては王となり邪魔になるものを殺してゆき、最後には滅びてゆくと言うマクベスをうまく表現しているように思いました。演奏会方式でしたが、歌と控えめな演技が上手い方だったと思います。バルトリさんと同じで良く通る声をしていらっしゃいます。この方も新国立の舞台で歌っていただきたいと思いました。

 

リッカルド・ザネッラートはあまり記憶に残っていませんが、特に問題なく良い歌手だったと言う印象があります。

 

マクダフ役の芹澤さんと言う方は、う〜ん、問題です。テノールですが、歌っている間中体に力が入って声の響きを止めているように見える。そのせいか特に高音になると声が後ろに引っ込んでいるように聞こえます。私にはあまり美しいとは思えませんでした。しかも歌っている時苦しげに見えます。

 

反対にちょい役ですが、マルコム役の城さんは素直な良く通る声で歌っていました。芹澤さんと一緒に歌うとき、会場では城さんの声の方が芹澤さんの声よりずっとよく聞こえていたのではないかと想像しています。

 

しかし、これはやはりムーティーの「マクベス」なのですよね。彼が全体を支配し、音楽を作り上げているのが強く感じられる公演でした。

 

これストリーミングでなくて文化会館で聴いた方がよかったなあ、と少々後悔しました。

 

(2021.4.19 wrote) 鑑賞記に戻る。