3.「コジ・ファン・トゥッテ」 ROHシネマ 2016

 

非常に良く練られた最近あまりお目にかかれない質の高い現代風演出。とかくだれがちな1幕目も、実際のROHの内部、列車の発車場、バーとかなり頻繁に舞台転換をしていたため飽きない。現代に読み替えと言っても途中で劇中劇が入り、通常のコジ・ファン・トゥッテではお約束のアルバニア人の時代物の衣装を着て演じるフェランドとグリエルモも見られる。

 

小細工も色々。「女は男をもてあそぶ、云々」を歌いながら撮影に使う照明を観客に向けたり(照明を向けられた女性のお客様、あなた達の事よ、ということかな?劇場で笑いが起こった)、舞台後ろに豆電球を使って書いて有る「COSI FAN TUTTE」(女はみんなこうしたもの)の最後の「E」をさりげなく「I」に変えて「COSI FAN TUTTI」(男もみんなこうしたもの)と作り替えていました。

二組の恋人達フェランドとドラベッラ、フィオルディリージとグリエルモは結局元の鞘におさまります。しかし最後の最後フェランドとフィオルディリージはそれぞれの恋人と手を繋ぎながらもふっと見つめ合うのです。余韻のある幕切れでした。

 

6人のキャストの歌も演技もレベルが高い。特にフェランドを歌ったDaniel Behleが秀逸。気持ちの切り替えの下手なフェランド君が恋人の愛を信じて優しく優しく歌う ”Un'aura amorosa 愛の息吹は" (動画2) はうまかったです。ちなみにwikiによれば、彼は作曲家兼オペラ歌手だそうです。 (2016.12.10. wrote)

動画 2:コジ・ファン・トゥッテ 第1幕フェランドの「愛の息吹は」