トスカ ウイーン国立歌劇場 2017 livestreaming 2017.5.8.

 

 

早々と完売御礼の「トスカ」。カウフマンは昨年と同じくアンジェラ・ゲオルギューと共演しました。しかし5月8日のlivestreamingは降板のゲオルギューに代わってマルティナ・セラフィンがトスカです。iltrovatoreは10日に鑑賞いたしました。

 

まずは第1幕初めに歌われるカウフマンの「妙なる調和」です。第一声を聴いただけで今日は調子がいい、と感じられます。彼の張りのある高密度の強い声が響きます。

 

アリアの最後 “ah! Il mio sol pensier sei tu! Tosca, sei tu!” 「おお、愛しているのはトスカ、君だけだ」と言うところはたっぷりと歌います。しかもピアノで歌われる最後の “tu” の音が美しく長く響いていました。 とにかく彼の歌は「聴かせる」のでこちらもオペラにぐっとのめり込まされてしまいます。

 

次にトスカ登場。セラフィンの声は多少キンキンしているのですがもともとトスカはキンキンした性格なので違和感は感じません。彼女は緊急の代役でしたが芝居も上手です。トスカとの二重唱の後、カバラドッシはトスカを上手いことあしらって早く教会から追い出そうとするがなかなか追い出せずいらいら焦ります。カウフマンはこの手の細かい芝居が上手い。

 

ついにスカルピア登場。なかなかに冷酷そうで期待が持てます。充実したバリトン声。テ・デウムはまあ無難に歌ったかなあ、と感じたのですが第2幕になってスカルピアの歌と演技が冴えます。残酷で暴力的で、トスカに襲いかかる迫真の演技がよい。相手をするトスカも上手い。引き込まれました。2幕はスカルピアとトスカの出番が多く、幕間のカーテンコールでの拍手は主にこの2人に向けられたものと思いました。

 

2幕でのカバラドッシのハイライトはやっぱり “Vittoria! Vittoria!” 「勝利だ!勝利だ!」でしょう。これがよれたり甘かったりすると「トスカ」は台無しです。しかしカウフマンは確信に満ち “Vittoria! Vittoria!” と叫びます。最後は”Vitto~〜ri~a〜”と彼のスピントな声が長く朗々と響き渡ります。聞き惚れました。

 

第3幕の舞台、満点の星空です。カバラドッシは星を眺めます。かなり長い間オーケストラが旋律を奏でるのですが、その演奏が主人公の微妙な心の想いを充分に表現しているので、音楽だけで既に胸が熱くなります。

 

カウフマンの「星は光りぬ」。いつも彼のやることですが前半は想いを弱音に託して歌います(難易度高し)。今回も上手い!この深く心に残る前半部のおかげでエモーショナルに歌われる後半部が更に効果的に聞こえるのだと思います。

 

当然ながら延々と続く嵐の様な拍手とブラボー。5月5日は長い拍手が続いてもbisしなかったのですが今回はどうかな??彼氏は2−3分の間じっとしていましたが、全く弱まることのない聴衆の要請にもじもじし始めます。聴衆は勢いを得て更に大きな拍手を続けます。とうとう「あなた方には負けました。しかたない、やりましょう」という風でカウフマンは笑みを浮かべ、指揮者はbisの演奏を始めました。このbisも一回目と同じく感動的に歌われました。

 

今回はbisがあってもトスカは遅れないでサンタンジェロ城に来てくれました。悲劇はそのまま続きます。トスカが通行証を見せてもカウフマン、じゃなくてカバラドッシは全く笑顔をみせません。ずっと下を向いて時々いやいや、と言う風に首を振っています。スカルピアが簡単にお情けを下されるわけはないと感じているのでしょう。トスカは無邪気に喜んでいます。しかし彼は偽の約束を信じていない。

 

最後彼は本当に銃殺されてしまいます。トスカは狂ったように「マリオ!」と叫びますが追っ手が近づきトスカは追い詰められます。トスカは ” O Scarpia, Avanti a Dio!” 「スカルピア!神の御前で会おうぞ!」と叫んで城壁から飛び降ります。

 

いや〜、トスカは見終わるとほっとしますね。緊迫したオペラの間中私もずっと緊張し続けているのでしょう。今回は3人とも上手かった!「トスカ」にのめり込めてハッピーです。この充実感があるからオペラ鑑賞を辞められない。カーテンコールは何回もありました。聴衆はとても満足した様子でした。

 

全くの蛇足ながら、カウフマン太りましたね。特におなかとおしりが・・・・。いや、べつにとやかく言うことではないのですけれども・・・・。

 

最後に一言。このlivestreamingは無料だったのです。そのためか当日はアクセスが殺到。オーバーロードでサーバーにトラブルが起き「トスカ」をうまく鑑賞できない人が続出したらしいです。その結果更に2日間「トスカ」見放題となり私は再度鑑賞させて頂きました。ウイーン国立歌劇場さん、ありがとうございます。(2017.05.13 wrote)