バラの騎士 ザルツブルク 2014

共演者:クラシミラ・ストヤノーヴァ (S): 椿姫、イルトラバトーレ、アイーダなどで共演。ソフィー・コッシュ(Ms): ウェルテルで共演は有名。ギュンター・グロイスベック (B): カウフマンとはチューリッヒのアンサンブルで何年か一緒だった。ティトの慈悲、リゴレット、フィエラブラスなどで共演。

 

Iltrovatoreが過去にこのオペラを観た記憶として頭に残っているのは、第1幕出だしでオクタヴィアン役がえらく太っていて幻滅したこと、オックスがけちでちんけな老人で存在感が薄かったことくらい。退屈なオペラという印象が強く長い間観ていませんでした。

 

しかし友人にこのビデオを強く勧められ渋々観て印象が変わりました。

 

元帥夫人は歌うのも演じるのも難しそうです。貴族階級が没落して新興の平民階級が勃興してくる時代。元帥夫人は自分のプライムの時期も段々と過ぎゆくことを自覚しています。ストヤノーヴァはこの様な元帥夫人をよく表現しており、姿もよく気品にあふれ、歌も高音部がつぶれずにいい声をして歌っていました。

 

内省的で難しい表現が要求される役と思いますが素晴らしいですね。第一幕だけでものすごく消耗しそうな難役です。若い二人を残して静かに去って行く最終幕、幕切れの歌・芝居とも余韻があってうまかったと思います。

 

コッシュさんは来日の「ファウストの劫罰」で実際歌われるのを聴きました。会場に入ってきただけで聴衆の心をぐっとつかむ素晴らしく存在感の有る方です。いずれ彼女について書くこともあろうかと思うので今回はパス。

 

注目はやはりギュンター・グロイスベックでしょう。彼のオックス男爵は単なる馬鹿,けちで気品のない男には見えません。好色でけちで乱暴で鼻持ちならない特権意識をもっている男ですが、貴族らしさもしっかりと併せ持つエネルギッシュな若い男爵に仕上がっています。

 

第2幕の最後酔っ払って「俺がいれば夜が長いなんてことはないさ」と歌う一人芝居は迫力でした。どう見てもいやな男を演じていますが役の解釈に沿った歌唱・演技はすごいです。

 

彼の声自体もいいですね。更に難しい極低音(低いホの音)もきちんと出していました。上の動画の歌の最後の部分です。彼がバリトンでなくて残念です。バスの目立つ役ってすくないです。もう10年後くらいたったら彼の宗教裁判長を観たいですね。いま宗教裁判長役をやるのには若すぎる気がしますが。

 

「バラの騎士」はマリア・テレジアが君臨する古き良きウイーンが舞台となっています。この上演は銀 (白) と黒が基調となったセンスのある演出、麗しい衣装でした。

 

2017年METで「バラの騎士」をやります。フレミング、ガランチャ、グロイスベックという豪華キャスト。特にフレミングは (本当かどうかは知らないが) MET引退公演、ガランチャはオクタヴィアンから卒業ということですので、思い出深い上演となることでしょう。2017METオペラビューイングが楽しみです。(2017.02.06. wrote)