リチャード・ギアとジュリア・ロバーツ主演の現代版「マイ・フェア・レディー」といった所でしょうか。最後はハッピーエンドになるラブコメディー映画。ジュリア・ロバーツはこの映画でゴールデングローブ主演女優賞を取りました。
"リチャード・ギア演ずるエドワード。仕事のためにロサンゼルスに飛んだ彼はひょんな事から hooker (売春婦) のビビアンを雇い、ある時オペラに連れてゆきます。演目は「椿姫」"。
この映画はコミカルでしゃれていて、ジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが何とも魅力的。楽しい映画で、「椿姫」のシーンをいれるのも良いアイデア、なのだが、、、、
以下2つが問題です。
まず第1に、歌に対する不満。
劇中オペラに出てくるヴィオレッタやアルフレードは俳優さんが演じていて歌は別人だそうです。しかし歌に満足できないのです。1幕のコロラトゥーラはまだしも2,3幕のヴィオレッタの盛り上がる場面は限りなくエモーショナルにドラマチックに歌って欲しいのですが声が細くて歌唱もイマイチ。はっきりと気に入りません。まあヴィオレッタは歌うのが難しい役なので、単なる私の趣味の問題かもしれませんけれども。
少ししか歌わないけれどアルフレードの声もちょっとねえ…。どうせ吹き替えなら過去のレジェンド歌手のど迫力録音に合わせて口パク演技の方が良かったのに、と思います。
2つ目。1つ目よりさらに問題。この映画最後の場面で「椿姫」第2幕の有名な音楽が流れます(下の動画)。この時ソプラノが歌っている歌詞は、上の動画の第2幕場面で歌っているのと同じ。
“Amami Alfredo, amami quant’io t’amo,
「アルフレード私を愛して、私があなたを愛するほどに
amami Alfredo, quan’io t’amo,
アルフレード私を愛して、私があなたを愛するほどに、
quan’io t’amo , Addio!”
私があなたを愛するほどに、さようなら!」
これは心ならずも別れると決心し心の痛みを押し隠したヴィオレッタの絶唱。オペラ第2幕の山場。悲劇の頂点がこの最後の「さようなら!」で、ヴィオレッタの自己犠牲に聴衆が涙するところなのです。(参考、iltrovatoreのオペラ解説:椿姫第2幕)
ですから、明るく楽しげな二人のハッピーエンドに「さようなら!」のアリアではオペラ音楽と映画の内容のつじつまがあわないのですよ!
(2019.07.05.wrote) おたく記事に戻る