ヴェルディ「アイーダ」第1幕より、「清きアイーダ」 ”Celeste Aida"
若き戦士ラダメスが奴隷アイーダへの密かな愛を歌います。カウフマンはアリア最後の難しい高音部分をヴェルディが指定したとおりピアニッシモ、モレンド(遅くしながら消えるように)で歌っています。
楽譜には指定されていませんが、最後をメッサ・ディ・ヴォーチェ(弱音からクレッシェンドしてまた弱音に戻る歌い方)付きで(これが最難関!)で歌えるのは現在世界でカウフマン一人。(参考「清きアイーダ考」)
追記:この歌は「私が兵士を率いて勝利するのだぞ!」と雄々しく叫ぶ歌ではなくレガートに美しく歌われるのが自然だと思います。
ランフィスの台詞とこのアリアの歌詞を読めばわかりますが、このアリアを歌う時点でラダメスは自分が指揮官に選ばれた事を知りません。
まだ名声を得ていない若い兵士が、「私が指揮官に選ばれたなら(それが私の夢)。そうしたら戦いに勝ち、愛するアイーダに正々堂々と愛を打ち明けるのだ」とアイーダに対する想いを込めて自分の心の中の密かな希望を歌うのです。
それ故ヴェルディはアリア最後の高音をピアノで消えてゆくように歌え、と指示していると考えます。(Iltrovatore)
Celeste Aida, forma divina.
清きアイーダ、神々しいその姿。
mistico serto di luce e fior,
光と花の神秘、
del mio pensiero tu sei regina,
あなたは私の心の女王様、
tu di mia vita sei lo splendor.
あなたは私の命の輝き。
Il tuo bel cielo vorrei redarti,
あなたに美しい空を、そして
le dolci brezze del patrio suol;
あなたの祖国の優しいそよ風を返してあげたい;
un regal serto sul crin posarti,
あなたの髪に王家の冠を載せ、
ergerti un trono vicino al sol.
あなたの王座を太陽の高みに持って行くのだ。
Celeste Aida, forma divina,
清きアイーダ、神々しいその姿、
mistico raggio di luce e fior,
光と花の神秘、
del mio pensiero tu sei regina,
あなたは私の女王様、
tu di mia vita sei lo splendor.
あなたは私の命の輝き。
lI tuo bel cielo vorrei redarti,
あなたに美しい空を、そして
le dolci brezze del patrio suol;
あなたの祖国の優しいそよ風を返してあげたい;
un regal serto sul crin posarti,
あなたの髪に王家の冠を載せ、
ergerti un trono vicino al sol.
あなたの王座を太陽の高みに持って行くのだ。
un trono vicino al sol!
あなたの王座を太陽の高みに!
un trono vicino al sol!
あなたの王座を太陽の高みに!
ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」第1幕より「ある日、青空を眺めて」 “Un di all'azzurro spazio”
コワニー伯爵家のパーティーで令嬢マッダレーナに請われ詩を朗読するシェニエ。その内容は自然を称賛する内容から次第に貴族階級への批判となります。
歌詞対訳:「ある日青空を眺めて」
Un dì all'azzurro spazio guardai profondo,
ある日 私は青空をじっと眺めていました、
e ai prati colmi di viole, pioveva loro il sole,
野原にはスミレが咲き乱れ、太陽の光は降り注ぎ、
e folgorava d'oro il mondo:
世界は金色に光り輝いていました:
parea la terra un immane tesor,
大地は大いなる宝、
e a lei serviva di scrigno il firmamento.
そして天空はその宝を入れる宝箱だったのです。
Su dalla terra a la mia fronte
この大地から私の額に
veniva una carezza viva, un bacio.
愛撫が、キスがあたえられたのです。
Gridai vinto d'amor:
愛の勝利です:
T'amo tu che mi baci,
キスして下さい、
divinamente bella, o patria mia!
神々しくも美しい、わが祖国よ!
E volli pien d'amore pregar!
愛にあふれて祈りましょう!
Varcai d'una chiesa la soglia;
教会の敷居をまたぐと;
là un prete nelle nicchie
そこには司祭がいて、
dei santi e della Vergine, accumulava doni –
聖人達や聖母マリア像の置き場に捧げ物をため込んでいましたー
e al sordo orecchio
しかし彼は
un tremulo vegliardo
老人が震えながらパンを求めるのに
invan chiedeva pane
耳をかさなかったのです
e invano stendea la mano!
老人は空しく手を伸ばしていました!
Varcai degli abituri l'uscio;
家々を歩くと;
un uom vi calunniava bestemmiando il suolo
男が怒りに満ち大地を呪っていました
che l'erario a pena sazia
国によって収奪される金のことを
e contro a Dio scagliava
神に見放されたことを
e contro agli uomini
そして人間を(呪い)
le lagrime dei figli.
子供達は涙を浮かべているのです。
In cotanta miseria
このような悲惨な状況を
la patrizia prole che fa?
貴族達はどうなさろうというのです?
(a Maddalena )(マッダレーナに向かって)
Sol l'occhio vostro
あなたの目には
esprime umanamente qui
人間的な感情
un guardo di pietà,
哀れみの情が現れています、
ond'io guardato ho a voi
私はあなたをみていたのですよ
si come a un angelo.
あなたは天使のようです。
E dissi: Ecco la bellezza della vita!
ですから、私はここに生命の美しさがあるといったのです!
Ma, poi, a le vostre parole,
しかし、あなたの言葉は、
un novello dolor m'ha colto in pieno petto.
私の胸に新たな苦痛をもたらします。
O giovinetta bella,
おお美しき少女よ、
d'un poeta non disprezzate il detto:
詩人を見くびるような事を言わないでください:
Udite! Non conoscete amor,
お聞き下さい!あなたは愛を知らない、
amor, divino dono, non lo schernir,
愛は神聖な贈り物、あざ笑ってはなりません、
del mondo anima e vita è l'Amor!
魂の世界では命が愛なのです!
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「母さん、あの酒は強いね」 "Mamma, quel vino e generoso"
人妻ローラ に手を出したトゥリッドはローラの夫アルフィオと決闘することになります。決闘の直前、彼は死を予感し酔った振りをして母にそれとなく別れを告げます。
歌詞対訳:「母さんあの酒は強いね」
TURIDDU
Mamma, Mamma,
母さん、母さん、
quel vino è generoso, e certo
あの酒は強いね、
oggi troppi bicchieri ne ho tracannati.
今日は何杯も飲み過ぎた。
Vado fuori all'aperto,..
外に出て行くよ、・・・
ma prima voglio che mi benedite
だけどその前に俺を祝福しておくれ
come quel giorno che partii soldato.
俺が出征したあの日のように。
E poi,... mamma,... sentite,
それから・・母さん・・・聞いておくれ、
s'io non tornassi, s'io non tornassi...
俺が帰らなかったら・・・
voi dovrete fare da madre a Santa,
サンタの母さんになってやっておくれ、
ch'io le avea giurato di condurla all'altare.
俺はあの子を祭壇につれてゆくと(結婚すると) 誓ったんだ。
voi dovrete fare da madre a Santa,
サンタの母さんになっておくれ、
s'io non tornassi.
俺が帰らなかったら。
Oh! nulla!
ああ、!なんでもないさ!
è il vino che m'ha suggerito! m'ha suggerito il vino!
ワインのせいだよ!ワインのせいなのさ!
Per me pregate Iddio! per me pregate Iddio!
俺のために神様に祈っておくれ!
Un bacio, un bacio, mamma!
キスしてよ、キスしてよ、母さん!
Un altro bacio, un altro bacio!
もう一度キスして,もう一度キスしておくれ!
Addio!...
さよなら!・・
S'io non tornassi, fate da madre a Santa,...
俺が帰らなかったら, サンタの母さんになっておくれ、・・
Un bacio, mamma!
もう一度キスしておくれ!
addio!...
さよなら!・・
プッチーニ「トゥーランドット」第3幕より「誰も寝てはならぬ」 “Nessun Dorma”
あまりにも有名なアリア。トゥーランドット姫の出した3つの問いに正解したさすらいの王子カラフが「誰も眠ってはならぬ。私の名前を誰も知らない。
・・・夜明けにトゥーランドット姫は私のものとなるだろう」というような内容を高らかに歌います。
Nessun dorma!
誰も寝てはならぬ!
Nessun dorma!
誰も寝てはならぬ!
Tu pure, o Principessa,
あなたも、王女様
nella tua fredda stanza guardi
あなたの冷たい部屋でみつめるのです
le stelle che tremano d'amore e di speranza!
愛と希望にうち震えている星々を!
Ma il mio mistero è chiuso in me,
私の秘密は私しか知らない
il nome mio nessun saprà!
私の名前を知る者はない!
No, no, sulla tua bocca lo dirò,
否、否、私があなたの唇に告げよう
quando la luce splenderà!
太陽が輝き始める時に!
Ed il mio bacio scioglierà il silenzio
私の口づけは沈黙を溶かし去り
che ti fa mia!
あなたは私のものとなるのだ!
Dilegua, o notte! Tramontate, stelle!
夜よ消え去れ!星々よ沈め!
Tramontate, stelle! All'alba vincerò!
星々よ沈め!夜明けに私は勝利する!
Vincerò! Vincerò!
勝つ!勝つのだ!
プッチーニ「トスカ」第1幕より「妙なる調和」 "Recondita armonia"
カバラドッシが茶色の髪黒い瞳の恋人トスカ、金髪で青い目をした見知らぬ美人(実は逃亡政治犯アンジェロッティの妹アッタヴァンティ侯爵夫人)二人の美しさを「妙なる調和」と讃え、しかし自分が恋するのはトスカあなただけだ、と歌います。
歌詞対訳:「妙なる調和」
Recondita armonia
全く違った美しさの
di bellezze diverse!...
絶妙なハーモニーなのだ!・・・
È bruna Floria, l'ardente amante mia...
茶色の髪のフロリア、僕の情熱的な恋人と・・・
e te, beltade ignota, cinta di chiome bionde!
そしてあなた、ブロンドの髪をした見知らぬ美人と!
Tu azzurro hai l'occhio, Tosca ha l'occhio nero!
あなたの瞳は青く、トスカの瞳は黒い!
L'arte nel suo mistero
芸術はその神秘の中で
le diverse bellezze insiem confonde;
様々な美しさを溶け合わせる;
ma nel ritrar costei il mio solo pensiero,
しかしこの美人を描いても僕の心にいるのは、
Ah! il mio sol pensier sei tu!, Tosca, sei tu!
ああ!僕の心にいるのは君だけ、トスカ、君だけだ!
ビゼー「カルメン」第2幕より「花の歌、おまえの投げたこの花を」 'La fleur que tu m'avais jetée'
カルメンを逃がした罪で牢屋に入れられた伍長ドン・ホセは出所してカルメンに会いに行くが冷たくあしらわれる。
以前カルメンが彼に投げ与えた花、そして牢にいる間もずっと持っていた枯れた花に託しカルメンに対する想いを歌う。曲の最後は熱い心の内をピアニッシモに込めて歌うことが多い。(参考鑑賞記「カルメン」」
La fleur que tu m'avais jetée,
おまえが投げたこの花を、
Dans ma prison m'était restée.
牢屋の中でずっと持っていた。
Flétrie et sèche, cette fleur
枯れてひからびてしまったけれど
Gardait toujours sa douce odeur;
ずっと甘い匂いがしていた;
Et pendant des heures entières,
何時間も
Sur mes yeux, fermant mes paupières,
まぶたを閉じて、
De cette odeur je m'enivrais
この匂いに酔いそうになりながら
Et dans la nuit je te voyais!
夜の帳の中でずっとおまえを見ていたんだ!
Je me prenais à te maudire,
おまえを呪い始めたよ、
A te détester, à me dire:
おまえを憎んで、こう言ったよ:
Pourquoi faut-il que le destin
何故おまえと知り合う運命に
L'ait mise là sur mon chemin?
なっちまったのかい?
Puis je m'accusais de blasphème,
それからそんなことを考えた自分を責めたよ、
Et je ne sentais en moi-même,
だけど、おれにはたった一つの望みしかないことを、
Je ne sentais qu'un seul désir,
un seul désir, un seul espoir:
たった一つの望み、たった一つの希望しかないことに気が付いたのさ:
Te revoir, ô Carmen, oui, te revoir!
それはおまえにもう一度会うこと、カルメン、そうさ、もう一度会うことさ!
Car tu n'avais eu qu'à paraître,
だって、おまえがあらわれて、
Qu'à jeter un regard sur moi,
ちょっと俺をみただけで、
Pour t'emparer de tout mon être,
俺はすっかりおまえのとりこになっちまった、
Ô ma Carmen!
おお、俺のカルメン!
Et j'étais une chose à toi!
俺はおまえのもんだ!
Carmen, je t'aime!
カルメン、愛している!
マスネ「ル・シッド」第3幕より「ああ!全ては終わった。〜おお裁きの主、父なる神よ」 “Ah! Tout est bien fini… Ô souverain, ô juge, ô père”
11世紀のスペイン。恋人の父を殺してしまった騎士ロゴリーグはムーア人との戦いに出かける。陣営の中で彼は「おお裁きの主、父なる神よ」と祈る。そこに聖ジャックが現れ戦いに勝利すると啓示する。ル・シッドとは征服者の意味。
Ah! tout est bien fini.
ああ! 全ては終わった。
Mon beau rêve de gloire,
我が美しき栄光の夢
mes rêves de Bonheur
幸福の夢は、
s'envolent à jamais!
永遠に飛びさった!
Tu m'as pris mon amour,
我が愛と
tu me prends la victoire,
勝利を、
Seigneur, je me soumets!
主よ、私はあなたにゆだねます!
O souverain, ô juge, ô père,
おお主よ、ああ裁きの主、父よ!
toujours voilé, présent toujours,
常に見えずとも、常に存在する御方よ、
je t'adorais au temps prospère,
私は富める時にもあなたを崇拝し、
et te bénis aux sombres jour.
つらい日々にもあなたを讃えました。
Je vais où ta loi me réclame,
私はあなたが命じるところにまいります、
libre de tous regrets humains.
人の悲哀から解き放たれて。
O souverain, ô juge, ô père,
おお主よ、ああ裁きの主、父よ!
ta seule image est dans mon âmeque
あなたは我が心の中におられる、
je remets entre tes mains.
私は我が心をあなたの御手にゆだねます。
O firmament azur, lumière, esprits d'en haut, penchés sur moi,
おお、紺碧の空、光、聖霊が私に向かって降りてくる
c'est le soldat que désespère,
兵士は絶望しているが、
mais le chrétien garde sa foi.
クリスチャンは信仰を守ります。
Tu peux venir, tu peux paraître,
神よ、おいでください、姿をあらわしてください、
aurore du jour éternel.
終わりなきこの日の暁に。
O souverain, ô juge, ô père!
おお主よ、ああ裁きの主、父よ!
Le serviteur d'un juste maître
神のしもべは恐れることなく
répond sans crainte à ton appel,
あなたの呼びかけに答えます、
ô souverain, ô juge, ô père!
おお主よ、ああ裁きの主、父よ!