「アスミック・グレゴリアン」(Asmic Grigorian)


1981年リトアニア生まれ(現在42歳)、両親がアルメニア人テノールとリトアニアのソプラノという声楽一家に生まれ、音楽に囲まれて育ちました。リトアニア音楽演劇アカデミーでピアノ、合唱指揮、歌を学び、バルト三国のオペラハウスでキャリアをスタートさせました。現在1男1女のお母さんでもあります(1)。

 

いままでに、イェヌーファ(イェヌーファ)、マリー(ヴォツェック)、タチアナ(エフゲニー・オネーギン)、マノン(マノン・レスコー)、リーザ(スペードの女王)、蝶々さん(マダム・バタフライ)、フェドーラ(フェドーラ)、ルサルカ(ルサルカ)、そしてワーグナーものとしてはゼンタ(さまよえるオランダ人)などを歌っています。

 

わりとスリムな体型のように感じるのですが声はリッチで力強く、上に書いたような強い声を必要とするキャラクターがとても似合っています。

 

彼女をあっという間に世界的なスターに押し上げたのは2018年のザルツブルク音楽祭での「サロメ」公演で、その素晴らしい歌唱に観客や演出家は圧倒され大評判を取りました。その後彼女は世界のトップ歌劇場で引っ張りだこの人気歌手となっています。

 

彼女は昨年来日して、演奏会方式で「サロメ」を歌いました。私も聞きましたが、強くなめらかで豊かな声、ムラのない高度な歌唱で主人公の内面の暗い情熱を表していて深く感動したことを覚えています。その時の鑑賞記を引用しますと、

 

「彼女はドラマティックな高音も潰れず、美しい弱音フレーズもしっかりと聞こえ、しかも表現力豊か。ヘロデ王に対して ”Ich fordre den Kopf des Jochanaan” (私はヨカナーンの首が欲しい!)ときっぱり要求する箇所でソプラノが普通歌うことのない低音Aをドスの聞いた声で出し、ド迫力でした。」

 

ちなみに私は2022年ザルツブルクで3役を歌った「三部作」やウイーン歌劇場2022年(?だったかな)「イエヌーファ」、その他も録画で観ていましたが、歌も演技も本当に上手い。はっきりとした美しい顔立ちで整った体型という利点も持っているので既に世界な人気ソプラノになっています。

 

彼女によると、

 

「(サロメをザルツブルクで歌って以来) 私は自分のやりたいことを選べるようになった。彼女(サロメ)は私に新しい自由を与えてくれた。」(2)。

 

「将来はイゾルデを歌いたいとも思っているが、私はそれほどたくさんのワーグナーを歌うつもりはない。・・・・だが色々なことに挑戦することが楽しい・・・・ある日トゥーランドットやノルマを今歌いたいと思い立ったらそのままに歌える柔軟性が欲しい。・・・声が出なくなるなどリスクが有ることは承知している。・・・リスクを取るがそれは私の選択なのだ。」(2)。

 

また彼女はパニック障害を持っているそうで、「ステージにいる時はいつもそんなもの。だけれど私はこれが私の人生の一部であると受け入れなければならない。ステージで完璧にリラックスできる芸術家ではないけれど、私はそれに対処するやり方を学びなんとか対処できていると思う。私に取ってこれは呪いではなく恩恵だと理解するようになった。」(2)  と語っています。

 

彼女へのインタビューから察するに、何事にも積極的で、冷静な判断力や強い意志力を持っていらっしゃるように見受けられます。

 

彼女はヴィリニュス市立歌劇場の創立メンバーであり、ゴールデン・ステージ・クロス(リトアニアの歌手に贈られる最高賞)を2度受賞し、オーストリア音楽劇場賞では2019年に最優秀女性主演歌手に選ばれ、2022年にはオペラXXI協会より年間最優秀女性オペラ歌手に選ばれています(3)。

 

1. Asmic Griggorian wiki :This page was last edited on 4 August 2023, at 10:04 (UTC).  

2. "DEN GRÖSSTEN DRUCK MACHE ICH MIR SELBER" BR KLSSIK” 2023.6.13 von Fridemann Leipold 

3. “Asmic Grigorian“ Askonas Holt