「ニーナ・シュテンメ」(Nina Stemme)

「トリスタンとイゾルデ」

 

スウェーデン出身のドラマティックソプラノ。1963年生まれ。現在最高のワグネリアンソプラノと呼ばれており、ブリュンヒルデ、イゾルデ、クンドリなどを歌っています。きっぱりと、ドラマチックソプラノです。ltrovatoreは彼女の舞台をいくつか見ているがいつも非常に安定した歌いぶりです。

 

スウェーデン出身の歌手として有名なのはビルギット・ニルソン。彼女は コレルリとの競い合いなどを初めとし愉快な逸話には事欠かないアクの強いソプラノでしたが、シュテンメは至って常識的で思慮深い人物に思えます。

 

彼女は ”もともと学生時代から歌に興味はあったが自分の声が美しいと思ったことはない。しかしスウェーデンで小規模なコンサートを始めて、観衆の心に響く物語を自分が物語れると気づいたOperawire)、ということです。

 

しかし彼女はすぐさま歌の道に入ったわけではありません。一旦ストックホルム大学で経営・経済を学んだ後、再び音楽を学ぶべくUniversity College of Operaに入り1994年に卒業します。この時すでに31歳ですから、オペラ歌手としては相当に遅いスタートでした。

 

彼女のソロ歌手としてのデビューは1989年イタリー「フィガロの結婚」のケルビーノ役だそうで、あのドラマチックなソプラノがそんなに軽い役から始めたのかとびっくり(Nina Stemme, Wikipedia  02:44, 7 January 2021‎)。

 

しかし1993年にはドミンゴが主催するOperaliaで優勝しています。

 

その時の録音を聞くに、高音は張りがあり中低音も幅の広い美しい響きを持っています。すでに世界トップドラマティコソプラノの片鱗を見せていますね。なんと若くお美しい。

 

もちろん彼女はワーグナーを頻繁に歌っていますが、その他にもR・シュトラウスのエレクトラやサロメ、モーツアルトの伯爵夫人(フィガロの結婚)も歌うし、ヴェルディのレオノーラ (運命の力)、プッチーニのミミ(ラ・ボエーム)、トスカ、ミニー(西部の娘)やトゥーランドットも歌うなど、幅広いレパートリーを誇っています。

 

iltrovatoreはミュンヘンで彼女の「トゥーランドット」を聞きましたが(鑑賞記)、強靭でドラマチックな声が響き渡り素晴らしかったです。

 

この様な彼女ですが、キャリアーが始まったばかりの若い歌手に向けて、

 

「いつもあなたの声とボディランゲージで物語を語ることを忘れないように。あなたがあなた自身の物語を語るのよ。キャリアーを急いで作ろうと思ってはいけないけれど勇敢でありなさい。あなたに欠点があるでしょうけれどそれを楽しみなさい、なぜならその欠点があなたの芸術性について何某かのヒントをくれるでしょう。そうやっていればあなたは上達しますよ。」Operawire。と含蓄の深いアドヴァイスをしておられます。

 

最後に、彼女は5カ国語を話すそうです(Nina Stemme, Wikipedia  02:44, 7 January 2021‎)(2021.01.12 wrote, 2021.3.13 部分改訂) 番外地に戻る