レオ・ヌッチ (Leo Nucci)

彼は1942年生まれ、現在78歳。プラチド・ドミンゴ(79)とともに最も高齢な現役オペラ歌手の一人です。すでにレジェンド歌手となっておられます。バリトンの名手として鳴らし、特に有名なのはリゴレット役。世界中でこの役を500回以上演じています。

 

若い頃はかなり明るめの声のバリトンで、重めのテノールと二重唱をするとどちらがテノールでどちらがバリトンかわからない、とも言われていましたが、年を重ねるごとにだんだんといわゆるバリトン風のバリトンになってきました。しかし相当高齢になった今でも声の響きは高めのように聞こえます。

 

若い頃はミラノ・スカラ座合唱団に所属していましたが、後にソロ歌手となりました。ソロ歌手としてのデビューは1967年「セヴィリアの理髪師」のフィガロ。現在でもこの役は彼のシグニチャーロールの一つとなっています。


彼のレパートリーは幅広く、ロッシーニからヴェルディの諸作品「椿姫」「イル・トロバトーレ」「マクベス」「運命の力」など様々。「リゴレット」を代表とするイタリアオペラがほとんどです。聴いていて気持ちよい。

 

一方彼は芝居達者です。「愛の妙薬」ではアディーナを一目見ただけですっかりゾッコンになってしまったベルコーレを軽妙洒脱に大袈裟に喜劇的に演じていて笑えます(こちら)。iltrovatoreは実はこのヌッチが大好きです。

 

ヌッチは親日家でたびたび日本を訪れ、歌ってくれます。Iltrovatoreは2017年パレルモ・マッシモ劇場来日の折に彼のジョルジョ・ジェルモンを聞きましたが、彼が出てきた瞬間から舞台がビシッと締まり、彼が主役のようでした。「歳の割には頑張っている」ではなく世界一流の壮年バリトン歌手そのもので、声の衰えは全く感じられませんでした(鑑賞記)。

 

しかしこの来日は彼が日本で歌う最後の公演になってしまったようです。本人に来日したいという希望はあるようですが、やはりもう日本では歌えないということで非常に残念です。

 

彼は一年ほど前に引退を発表しましたがこのコロナ禍の最中再び舞台に立っているようです。何かやむにやまれぬ想いがあるらしいです。 (2020.12.01 wrote、2021.3.14改定) 番外地へ戻る