オテロ バイエルン州立歌劇場 2019.7.12.公演

この「オテロ」公演は昨年12月に日本でもライブストリーミングで観ることが出来たため、既にご覧になっていらっしゃる方も多かったのではないでしょうか。iltrovatoreもこのストリーミングを観、鑑賞記を書きました。

 

今回は演出も歌手達もストリーミング時と同じでした。歌手達、演出に関する感想も鑑賞記に書いたのと全く変わりません。特にアメリー・ニールマイヤーの演出はヴェルディを嘗め、己のわずかなアイデアに固執していると思うばかりです。

 

演出家はデズデモナを強い女と演出したかった、と語っていますが、今回のデズデモナは精神不安定女にしか見えません。

 

むしろ2017年ROHでの「オテロ」公演の演出、怒り狂ったオテロ(カウフマン)に引き倒されたデズデモナ(アグレスタ)が、助け起こそうと近寄った侍女をそっと手で留め、倒されたままでいたその姿に凜とした強さを感じましたが。

 

まあ、演出に文句を言いながらもさすが歌は上手かったです。カウフマンの声に関して、6月のロレックスガラで一応調子は戻ったと思えども確信を持てないでいましたが、今回は全く問題無く調子良いと思えました。彼の響きを伴った深い声が耳に心地よかったです。(それなのに、次の15日の公演は風邪でキャンセル。ああ、カウフマン・・・。)

 

ハルテロスも絶好調。女性は男性より一オクターブほど高音のため声がオーケストラを越えて響き易いですが、それ以上にものすごく響き渡り何とも素晴らしかった。

 

フィンリーはさほど大声の持ち主ではないと思えます。しかし弱音で舐めるような柔らかさで歌われたその歌は、狡猾なイヤーゴが見えない絹糸でオテロをゆっくりと締め上げて行くようでした。演技も非常に上手く引き込まれました。イヤ〜この方、良いですわ〜。

 

今回は演出家に抑圧された感のある合唱ですが、演出家の意図を越えて素晴らしく印象的でした。この合唱団は何時もハイレベルな歌を披露してくれます。

 

舞台終了後のカーテンコール。主役3人に対して満足の歓声と拍手とバイエルン名物のドドドと響き渡る足踏みあり。

 

そして最後カウフマンが一人前に進み出ると、オーケストラが突然 “Happy birthday to you” を演奏。観客は拍手、再びドドドの足踏み。ま、お誕生日は10日なのですけどね。するとバイエルン歌劇場総裁、ニコラウス・バッハラーが登場し、カウフマンに「マイスタージンガー」アワードのメダルと花束を渡しました。

 

観客も大喜び。世界のトップテノールながら座付き歌手のように頻繁にバイエルン歌劇場に出演するカウフマンはミュンヘンの人々に愛されていますね。

いずれにしても、始めから終わりまで楽しめた心温まる公演でした。 (2019.7.16. wrote)

 

鑑賞記に戻る