ミュンヘンオペラフェスティバル2017鑑賞記 アンドレア・シェニエ 2017.7.31.

 

7月29-31日にかけてバイエルン州立歌劇場で上演されたラ・ファボリート、ホフマン物語、アンドレア・シェニエを鑑賞してきました。

 

主な配役を見てもラ・ファボリートはガランチャ、ポレンザーニ、クヴィエチェン、ホフマン物語はダムラウ、アンドレア・シェニエはカウフマンとハルテロス、と3つの演目全てトップスター達の競演。しかもそのスター達の歌・演技が実に素晴らしく、そのレベルの高さは世界一と思えました。

 

またこの劇場は音響効果が抜群で、歌手達の声が劇場全体に、また私どもの体によく共鳴し自分の目の前で歌われているような感覚がありした。

 

まずは最終日31日に鑑賞したアンドレア・シェニエから。

これはiltrovatoreが今年3月鑑賞記に書いたアンドレア・シェニエと同じ演出,同じ歌手達です。歌唱に関する感想はさほど変わりませんのでそちらをご覧下さい。しかし、生上演にハプニングはつきもの。

 

まずは幕が上がってジェラードが歌い出す場面。あれっ!ルカ・サルシの代わりに巨漢が歌い出すではありませんか。あまりの大きさに鬘が頭にはまらず乗っかっているようにみえる!なんと、カウフマンとハルテロスばかり気にしていてそれ以外のキャストチェンジを見ていなかった。しかしこのおっさんどこかでみたことがあります。

 

幕間にキャスト表をみたらば、なんとアンブロージュ・マエストリ!そうか、ファルスタッフがジェラードになったか・・・。彼はとにかく巨体です。それ故今回のこまこまと仕切られた狭苦しいシャンバーの中では何とも動きが鈍い。ファルスタッフ (私には彼がジェラードに見えなかった) とカウフマンの対決も動けない、というか動きがない。

 

又、3月のlivestreamingでサルシはハルテロスに強引に迫りのしかかる迫力の有る演技をしましたが、今回それは無理。ハルテロスがつぶされることを恐れてか演技はささやかなものでした。

 

とまあ、今回の場合ヴィジュアル、演技的には問題がありました。また革命が進むにつれて変化するジェラードの心の表現はサルシと比べてイマイチだったでしょうか。しかしアンブロージュの歌そのものは悪くなかったし、急な代役としてのお役目は立派に果たしたと思います。

 

肝心のカウフマンとハルテロスです。一幕の歌い出し、二人の声ともこちらにあまり飛んでこず、少々心配になりました。

 

さらにインターミッションが終わる頃、隣席のオペラおたくとおぼしき知的で素敵な紳士が 「カウフマンのカバーの何とか(私には名前が聞き取れなかった)がインターミッションの間もまだ歌の練習を続けているんですよ・・・(しかしそんな情報をどこで仕入れたのだろう?)・・・」 と心配げに教えてくれたのでこっちの方も不安になってしまう。今年5月METのドンジョバンニのように上演中の主役交代なんて悲しすぎる!

 

心配性な私は3幕が始まってからずっと双眼鏡でカウフマンを凝視し続けていました。しかし後半はカウフマンもハルテロスも調子を上げてきました。

 

ハルテロスの「亡くなった母を」はいつもの如く心を打たれる名唱でほれぼれしましたし、カウフマンの「私は兵士だった」 は革命に裏切られた悲痛な気持ちを込めた絶唱で、輝かしく張りのある強烈なスピント声が私の鼓膜を直撃し、遠路はるばる来た甲斐があったと思えました。また「5月の晴れた日のように」 も最後の二重唱も盛り上がりました。

 

しか〜し、カウフマン、ハルテロスが上手かった割に私自身は思ったほどこのオペラにのめり込めなかったのです。

 

理由第一は舞台で目に入る物が多すぎる。歌手達が素晴らしいアリアを歌っているのに、歌手の上下左右ででうろうろと別の動きをする人々が絶えず視界に入り歌に集中することができないのです。わずらわしいことこの上なく、歌っている歌手に焦点を絞って映像を送ってくれるlivestreamingで聴く方がよほどまし、とさえ思えました。

 

理由第二はオーケストラの爆音鳴らしすぎ。カウフマンやハルテロスが響きのある素晴らしくいい声を出しているのに、その上におっかぶせるような轟音のオーケストラ。それでも彼らの声が聞こえるのはすごいと思いましたが、オーケストラの音量をもう少し小さくしたら二人の声が劇場一杯に浪々と響き渡ったろう、と感じられオーケストラに邪魔された気分。

 

特に最後の場面のカウフマンとハルテロスの二重唱は素晴らしかったのに、、、、。そういえばこの点も批評家に指摘されていましたね。

 

とまあ、あれこれぐちぐち書き連ねましたが、カウフマンとハルテロスの舞台は全体として素晴らしかったのでとても満足でした。(2017.8.3.wrote)

 

7月31日、iltrovatoreが鑑賞したオペラ終演後のカーテンコール風景、各歌手達へのインタビュー等をうつしたライブです。カウフマンとハルテロスへのインタビューも最後の方に入っています。