エリーナ・ガランチャ (ELĪNA GARANČA)

 

エリーナ・ガランチャは1976年生まれ。今年42才になります。現在最高の人気を誇るメゾソプラノの一人。ラトヴィアの音楽一家に生まれ、母親は有名な歌手でした。ラトヴィアはバルト三国の一つでソ連邦に属していましたが、28年前(1990年) 独立しました。

 

独立前のラトヴィアでの生活は「生き抜くこと」が大変で、食べるものにも事欠き、彼女の父親が朝早くから夜遅くまで丸一日かけてやっと手に入れたトイレットペーパーをその後3-4ヶ月の間使う、という状態だったそうです 。そのような状況にあって、声一つを頼りに外国に行き、認められる様になるまでには色々苦労があったことでしょう。

 

彼女は語学が達者で、ラトビア語は当然、英語、フランス語、ドイツ語は流ちょうに話します。イタリア語も問題なく話すでしょう。ロシア語も話せるはずだと思いますが、彼女がロシア語を話しているビデオをみたことはありません。彼女はサルスエラもよく歌っていますからスペイン語も話せますね、きっと。

 

彼女がインターナショナルなスターになったきっかけは2010年METのカルメンでしょう。アンジェラ・ゲオルギューの代役としてロベルト・アラーニャと共演したガランチャは、ねっとりお色気系というよりボーイッシュでクール、死より自由を選び取る独立した女カルメンを演じて大評判を取りました。

 

彼女はモーツアルトのみならず、ロッシーニ「チェネレントラ」の難しいアジリタやドニゼッティ「ラ・ファヴォリット」のドラマティックな役等も軽々と歌いこなします。

2016 バイエルン歌劇場 「ラ・ファヴォリット」 


 

ただしiltrovatoreにとって一番素敵な彼女はズボン役、特にバラの騎士のオクタビアンです。見目麗しく背も高く、宝塚も真っ青のいい男ぶりで(歌も上手いことは申し上げるまでも無いです)、「ベルサイユのバラ」のオスカルってこんなひとだったかな、と思ってしまいます。この方の最後のオクタビアンを観るために私はわざわざMETに行ったくらいです(鑑賞記)。

 

しかし、彼女は2017年のオクタビアンを最後にズボン役を卒業し、最近は「ドン・カルロ」のエボリ、「サムソンとデリラ」のデリラなど複雑な内面を持つ女性役にシフトしています。昨年秋にパリオペラ座で観たエボリも素晴らしく、豊かで深いメゾ声、迫力満点の臨場感溢れるアリア、特に「呪わしき我が美貌」で大喝采を貰っていました(鑑賞記)。

2017パリバスチーユ「ドン・カルロス」

 

彼女のご主人は指揮者のカレル・マーク・チチョン氏。よく共演なさっておられます。

 

おまけ

ガランチャは一年ほど前 (MET「バラの騎士」公演に際して) のインタビューでファンからの質問に答えています。

彼女は低音の歌手が好きなこと、ブロードウェーが好きなことなどなどを語っています。

(2018.9.8 & 9.12 wrote) 番外地に戻る