MET Stars Live in Concert ヨナス・カウフマン in Polling, Bavaria 2020.7.18

注:「鑑賞記」のページに入れましたが、このリサイタルを聴きながらの単なる呟きです。

 

METライブビューイングでは毎度のお約束、様々な歌手が出てくるNewbauer、Bloomberg、 Rolexの広告がありMETビューイングの雰囲気を醸し出しています。Rolexの広告はMETにあまり出演しない歌手も出ているので好き。Sonyも今回のプロジェクトに参加している

 

ニューヨークからの司会はクリスティーン・ガーキー。

ゲルブさんのコメント付き。

(大意)私たちは聴衆と偉大な歌手達との絆を保ち続けるため、そして舞台を見ることのできなくなった聴衆と歌えなくなった芸術家のため、そしてシャットダウン中の歌劇場のために今回新シリーズを企画しました。ヨナスは大変でしょうけど。

 

“Recondita armonia” 「妙なる調和」 from 「トスカ」

 

途中聞こえなくなった箇所がありました。そういえばどこかのフィルムでカウフマンが「(今回のプロジェクトで)僕は(最初に歌うから)ギネアピッグ(実験用のモルモット)だ」と言っていました。少々気分が削がれる。

 

“E lucevan le stelle” 「星は光りぬ」 from 「トスカ 」

 

“E lucevan le stelle”「星は光りぬ」と歌ったところで天井を仰いでいました。カバラドッシになっています。初めのフレーズをピアノで始めるのはいつものことですが、いつもながらこの部分は難しそうと思います。最後は情熱を込めたフォルテッシモ。

 

MET2018「西部の娘]第3幕、“Ch’ella mì creda libero”「やがてくる自由の日」を含む最後の場面の映像。

 

今回のコンサートのやり方だと、アリアとアリアの間に拍手もなくて歌手が喉を休憩させる暇がない。だからこういう映像で時間を稼ぐと言う意味もあるかもしれません。

 

“La fleur que tu m’avais jetée” 「花の歌」 from「カルメン」

 

声が重くなっているので、最後のB♭ピアニッシモはどうかいなあと思っていたがうまく歌っていました。軟口蓋をいっぱいに広げてピアニシモ出します、的なすごい顔だったけれど。

 

“L’amour, l’amour … Ah! lève-toi, soleil!”「太陽よ、昇れ」 from 「ロメオとジュリエット」

 

若い歌手がリリックに甘く情熱的に歌うと素敵な歌だと思うのだが、彼はうまさで勝負ですね。

 

MET2014 「ウェルテル」を歌ったときの幕間インタビューとアリア

 

"Pourquoi me reveiller, o souffle du printemps?"「春風よなぜに我を目覚ますのか」

何年か前のことですが“ウェルテルのキャラクターをどう表現するか”を話す彼の興味深いインタビューがありました。「ウェルテル」を見るとき参考になると思うので、いつか翻訳してサイトに載せたいです。(追記:載せました

 

“O paradis sorti de l’onde”「おお、パラダイス」 from 「アフリカの女」

 

出た!高音ピアノ。フランスオペラの高音はえらく高くて難しい。高音を完璧なファルセットで歌う歌手も多い。彼はミックスボイス(難しいのですよ)で歌っていますかねえ。しかし輝かしい歌です。

 

“Ah! Tout est bien fini ... O Souverain, ô juge, ô père!”「ああ!全ては終わった。〜おお裁きの主、父なる神よ」 from 「ル・シッド」

 

来日した時歌ったアリアです。フランスオペラはどれも輝きと色彩感があって、これは私の好きな歌。

 

MET2011「ワレキューレ」映像 第1幕のモノローグ

 

彼が若いです。有名な”Wä 〜〜lse! Wä〜〜〜lse!"  息が長い!

 

「花の歌」や「おお、パラダイス」の高音ピアニシモ、そしてこのような長いブレスなどはテノール歌手の高度な技術を披露する反面、単なるショー、見せびらかし、という側面もあるのです。でも、こういうところで素敵!と思っちゃったりする。

 

私はエンターテイメント性もオペラの本質の一つと思っていますので、このような箇所で観衆を喜ばせてくれるのが嬉しい。ミーハーも楽し、オペラの醍醐味!

 

“Cielo e mar”「空と海」 from 「ジョコンダ」

 

これはあまり上演されないオペラで私は見たことがないです。バレエ音楽の「時の踊り」が有名です。きれいなアリアですね。またやった、最後のメッサ・ディ・ヴォーチェ(弱音からクレッシェンドしてまた弱音に戻る歌い方)。効果的やなあ。

 

“L’anima ho stanca”「心は疲れて」 from 「アドリアーナ・ルクブルール」

 

これをオペラ舞台で演じたのはゲオルギューとROHで歌った時だけのような気がします。

 

Helmut Deutschさんのピアノによるマノン・レスコーの第3幕への間奏曲。

 

素晴らしく美しく、泣けてくる音楽。

 

“Ombra di Nube” 「雲の影」 Licinio Refice作曲

 

しみじみと心に染みる歌。最後は柔らかくピアノで終えました。

 

“Un dì, all’azzurro spazio” 「「ある日青空を眺めて」 from 「アンドレア・シェニエ」

 

第1幕、大地への賛歌から次第に貴族・僧侶階級への批判に代わってゆく。その歌い方の変化が好き。シェニエは彼にぴったりです。

 

ザルツブルク2015「道化師」での「衣装をつけろ」の映像

 

彼のキャラクターに合わない唯一の役がカニオと思っています。刺青を入れて髪を逆立てヘンテコな髭をつけても、彼が粗暴で無学で嫉妬深い中年おじんには見えない。歌はうまいですけどね。

 

“È la solita storia”  「フェデリーコの嘆き」 from 「アルルの女」   

 

ただひたすらに美しい!有名なアリア。最後は情熱的。

 

ドイチェさんによる「道化師」の間奏曲。

 

第1幕の緊張と興奮をなだめるような限りなく美しいメロディー。バックにカウフマンが過去に歌った様々なオペラの映像(MET以外も含め)が流れます。

 

“Nessun dorma”「誰も寝てはならぬ」 from 「トゥーランドット 」

 

全体にゆったりと歌っていましたかね。(最後の高音の響きがイマイチだったかな

 

最後に:歌っている時、時々たんが喉に引っかかっていた感じ。でも好調と思えました。久しぶりにオペラアリアを聴くと、本物のオペラ舞台がとても恋しくなります。

 

ヨナス・カウフマンの最後の謝辞(要旨)

 

このコンサートを見ていただきどうもありがとうございました。今回のシリーズで最初に歌うことができて光栄です。昨今パーフォームする機会のなくなったアーティストに僕のポケットから少なくとも五千ドル寄付できて良かったです。みなさま方におかれましても彼らを助けるため(寄付を)御一考いただければ嬉しいです、いつかまた皆さんの愛する芸術を我々が再開するために。

 

 

以下の歌の歌詞の和訳はこちらにあります。

 

「ある日、青空を眺めて」 “Un di all'azzurro spazio” 

「誰も寝てはならぬ」 “Nessun Dorma” 

「妙なる調和」 "Recondita armonia" 

「花の歌、おまえの投げたこの花を」 'La fleur que tu m'avais jetée' 

「ああ!全ては終わった。〜おお裁きの主、父なる神よ」 “Ah! Tout est bien fini… Ô souverain, ô juge, ô père”

 

上のアリアのいくつかを含め以下のアリアの和訳はiltrovatoreのオペラ解説の中に出ています。

アンドレア・シェニエ “Un di all'azzurro spazio” 「ある日、青空を眺めて」

トスカ 」の“E lucevan le stelle” 「星は光りぬ」、 "Recondita armonia" 「妙なる調和」 

西部の娘」の “Ch’ella mì creda libero「やがてくる自由の日」

道化師」の “Vesti la giubba” 「衣装をつけろ」

(2020.7.19 wrote)