2022/23 ヨナス・カウフマン出演予定オペラ紹介

来シーズンのオペラ公演予定が大方出揃ったところです。新たな情報があれば追加します。今シーズンの初ロールはタンホイザー。2022/23シーズンの詳しい予定は本サイトの「情報&スケジュール」に載せてあります。

 

ざっと観たところ、出演演目はすべて既出の演出です。比較的問題がないオーソドックスな演出が多く、ぶっ飛んだ演出はありません。その分聴衆は歌と演技に集中できるかもしれません。追記:最近発表になったサンカルロ劇場での「アンドレア・シェニエ」が新演出と出ています。(2022.9.17)

 

ブリテン、ピーター・グライムス、ミュンヘン、バイエルン歌劇場

2022.9.21, 24, 27, 30  

Jonas Kaufmann, Rachel Willis-Sørensen、Christopher Purves

指揮:James Conlon、演出:Stephen Herheim

 

今年1月にウイーン歌劇場でロールデビューした役。音声のみ放送されたがなかなか良かったです。バイエルンでストリーミングしてくれないかなあ・・・

このオペラで唯一有名なアリア。

Peter Pearsが歌う”Now the Great Bear and Pleiades"


 

プッチーニ、西部の娘、ミュンヘン、バイエルン歌劇場

2022.10.16, 20, 23, 28 

Malin Bystrom, Claudio Sgura, Jonas Kaufmann

指揮:Daniele Rustioni、演出:Andreas Dresden

 

2013年ウイーン歌劇場でニーナ・シュテンメと、2018年METでウエストブルックと共演しました。iltrovatoreはMETでの上演を観ましたが(鑑賞記)、歌も演技もうまくてミニーとの愛の場面も魅力的でした。今回のバイエルン劇場の演出も悪くはないけれど、本場ウエスタン風のMET演出の方が私の好みであります。「西部の娘」のオペラ解説はこちら

MET 2018

カウフマンの歌う”Ch'ella mi creda libero e lontano"


 

ジョルダーニ、アンドレア・シェニエ、ウイーン、ウイーン歌劇場 (2022.11.30, & 12.3. 6. 9) 、サン・カルロ歌劇場( 2023.2.19, 21, 23, 25 )、不確定ですがスカラ座 (2023.5.3 - 5.27)

ウイーン歌劇場

Jonas Kaufmann, Carlos Alvarez, Maria Agresta

指揮:Francesco Lanzillotta, 演出:Otto Schenk 

 

モンテカルロ歌劇場、 2023.2.19, 21, 23, 25

Jonas Kaufmann, Claudio Sgura, Maria Agresta

指揮:Marco Armiliato, 演出Pierfranco Maestrini

 

スカラ座

Jonas Kaufmann, Sonya Yoncheva, Ambrogio Maestri/Amartuvshin Enkhabat

指揮:Marco Armiliato、演出:Mario Martone

 

カウフマンはすでにマクヴィカー (ROH, リセウ歌劇場)、 シュトルツル (バイエル歌劇場)、シェンク (ウイーン歌劇場)の3つの演出で歌っています。ウイーンのシェンクの演出は長くつかわれていて、若きドミンゴ様もこのシェンクの演出で歌っています。落ち着いて美しく、台本に沿った演出です。スカラ座の演出も悪くない。

 

私は2018年にハルテロスとフロンターリが共演したウイーン歌劇場での公演 (鑑賞記)を観ていますが、シェニエはカウフマンにピッタリの役で、彼の輝かしい声に酔うことができました。「アンドレア・シェニエ」のオペラ解説はこちら

ウイーン歌劇場2018

カウフマンの歌う "Un dì all'azzurro spazio, guardai profondo..." 


 

プッチーニ、トスカ、スイス、チューリッヒ歌劇場

2022.12.15, 17, 20 

Sandra Radvanocsky, Jonas Kaufmann, Bryn Terfel

指揮:Gianandrea Noseda, 演出:Rovert Carsen

 

チューリッヒのオペラ舞台で歌うのは久しぶりです。まあ状況が変わったので、、、

「トスカ」はチューリッヒで2009年にエミリー・マギーと歌ったことがあります。その時もこのカーセンの演出でした。

 

特に問題のない演出です。「トスカ」と「アンドレア・シェニエ」は時代設定が極めてはっきりとしており、歌詞も歴史にきっちりと沿っているので、時代設定をあまりに崩した演出だと音楽の力(迫力)が失われてしまうオペラです。

 

カヴァラドッシもカウフマンにピッタリの役でしょう。彼の"Vittoria! Vittoria!" はいつ聴いても惚れ惚れします。下の動画を見ると今と比べ随分痩せていますなあ。「トスカ」のオペラ解説はこちら

チューリッヒ歌劇場2009、第2幕、

Jonas Kaufmann, Emily Magee, Thomas Hampson

"Floria!.....Amore....Vittoria!Vittoria!"


 

ヴェルディ、アイーダ、ウイーン、ウイーン歌劇場

2023.1.14,18, 21, 24  

Jonas Kaufmann, Elina Garanca, Luca Salsi, Alexander Vinogradov (未確認情報:未定の主役アイーダはネトレプコになるかもしれません。)

指揮:Nicola Luisotti、演出:Nicolas Joel

 

もしカウフマン、ガランチャ、ネトレプコと並んだら、下のタンホイザーと並んで本年のオペラ界で最も注目される公演になり、チケットを確保するのが大変でしょう。

 

カウフマンは2015年バイエルン歌劇場、2020年ナポリ サン・カルロ劇場 (演奏会方式)、そして2021年パリオペラ座でラダメスを歌っていますが、バイエルンでは安っぽい鎧にスニーカーなどというヘンテコな衣装で幻滅。オペラ座ではラドヴァノフスキー演ずるアイーダが素晴らしい歌と演技で演じているに関わらず、隣にいるカウフマンは彼女の代わりに原始的なアイーダパペットの相手をしながら歌うというおかしげな演出でした。

 

私は以前ウイーン歌劇場で今回と同じ演出の公演をみています (ただしカウフマンは出演していませんでした) 。が、上記のバイエルンやパリでの演出と比べたら遥かにまともで違和感はありません。もっともこのウイーンの演出は経費節減型でMETや新国立の豪華な舞台にはかなわないと思っています。

 

追記:2022.8.28日にArena di Veronaで一回だけラダメスを歌います。Franco Zeffirelliの演出なので楽しみ(2022.8.9)

 

「アイーダ」といえば、カウフマンの "Celeste Aida" 「清きアイーダ」 がとにかく絶品。アリアの終わりの一節 "un trono vicino al sol, un trono vicino al sol”。ゆったりと上昇し、最後の高音B♭をモレンド、メッサ・ディ・ヴォーチェで歌うのが何とも美しい。これだけ楽譜通り情緒豊かに音楽的に完璧にしかも確実に歌えるテノールは現在カウフマンのみと思います。(参考:おたく記事「清きアイーダ」考)。「アイーダ」のオペラ解説はこちら

2020 in Piazza del Plebiscito

カウフマンの歌う"Celeste Aida"

ウイーン歌劇場の「アイーダ」演出


 

ワーグナー、タンホイザー、ザルツブルク、ザルツブルク音楽祭

2023.4.1.5.9

Hermann:Georg Zeppenfeld, Tannhauser: Jonas Kaufmann, Wolfram: Christian Gerhaher, Elisabeth: Marlis Petersen, Venus:Elina Garanca、

指揮:Andris Nelsons, 演出:Romeo Castelllucci

 

カウフマン初ロール。Zeppenfeld, Gerhaher, Petersen, Garancaとこれもまあなんとも豪華な歌手陣。ガランチャのヴェーヌスも良いなあ。待ち遠しい。聞きに行きたいわ〜ですが、、、この公演もチケット買うのは超大変でしょう。

 

2017年にバイエルン歌劇場でフォークト、ハルテロス、ゲルハーハが出演した時の「タンホイザー」演出と同じ。おっぱい丸出しの女性が弓を引くやつ。日本でも引っ越し公演をやりましたね。私の許容範囲にはある演出。

バイエルン歌劇場の「タンホイザー」


 

ワーグナー、ワルキューレ、ナポリ、テアトロ・サン・カルロ

2023.4. 16, 20, 23, 26, 29

Jonas Kaufmann, John Relyea, Christopher Maltman, Vida Miknevičiūtė, Varduhi Abrahamyan and Okka van der Damerau

指揮:Dan Ettinger, 演出:Federkci Tiezzi

 

ステファン・リスナーがテアトロ・サン・カルロに移ってからカウフマンが頻繁にナポリで歌うようになったと感じます。今回も「またここでやるんか〜い」という感じです。レリエがフンディング、マルトマンがヴォータン、ブリュンヒルデがオッカ・フォン・ダメラウ。そしてジークリンデがVida Miknevičiūtė (なんと発音するのかわからん) という美形のソプラノでワーグナーのあれこれやサロメなどを歌っている人です。

 

テアトロ・サン・カルロの演出は予算削減系に思えるがへんてこではない。下に出したのはMETでのカウフマンのジークムントの “Wälse!”


 

ウェルテル、マスネ、ロンドン、ROH

2023.6.20, 23, 28, and 7.1, 4 

Jonas Kaufmann, Aigul Akhmetschina, Gordon Bintner, Sarah Gilford、

指揮:Antonio Pappano, 演出:owned by Opéra national de Parisによる

 

これもカウフマンのシグニチャーロールということになるのでしょう。2010年パリオペラ座と2014年METで歌っています。

 

パリオペラ座とのco-productionということなので、2010年にパリオペラ座でカウフマンがウェルテルを歌ったのと同じ演出ということですか?これもなかなか良かったです。

 

この数年間を考えると、イタリア人ヴェルディが作曲したフランス語版の「ドン・カルロス」を除けば、彼がフランスオペラをオペラ舞台で歌ったのは、2019年ハンブルクでの一回きりの公演「カルメン」しかありません。カウフマンが歌う久しぶりのフランスオペラです。

パリオペラ座2010

カウフマンの歌う"Pourquoi me reveiller"


 

ヴェルディ、オテロ、エクサンプロヴァンス、フランス

2023.7.17 

Jonas Kaufmann, Ludovic Tézier, Maria Agresta

指揮:Michele Mariotti

 

これもテアトロ・サン・カルロ主催。現在のところ演出者の名前が出ていないのでどんな演出かわかりません。わかったら追記します。主役3人は豪華。

 

(2020.05.15 wrote) 映像・音楽に戻る